こんにちは。ディベロップメントテクノロジーセンターのあかみーです。
昨年度の話になりますが、社内の勉強会で「ふりかえり ワークショップ」を開催させていただきました。 このワークショップでは、「ふりかえり」(レトロスペクティブ)に焦点を置き、参加した方々には、ふりかえりの目的・手法について学ぶだけでなく、実際にふりかえりのいくつか手法を実際に体験していただきました。今回は、このワークショップで実際に行ったふりかえり手法をいくつかご紹介させていただきます。
今回行ったワークショップでは、以下の書籍を参考に、開催させていただきました。
書名:アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き
著者:Esther Derby, Diana Larsen
訳:角 征典
出版社:オーム社
このテキストには様々なふりかえりの手法について解説されているので、気になる方はぜひ読んでみてください。
ふりかえりの基本的な流れと時間配分の目安は以下のようになっています。
(例:1時間で開催する場合の目安)
- ふりかえりの場を設定 5分
- データを収集する 15分 (個人で収集:5分、チームで議論:10分)
- アイデアを出す 15分 (個人でアイデア出し:5分、チームで議論:10分)
- アクションを決定する 10分 (チームで議論:7分、合意:3分)
- ふりかえりを終了する 5分
ワークショップでは、この1〜5を実際に行い、各工程で1つずつ振り返り手法を体験していただきました。それでは各工程の目的と、体験していただいた手法をご紹介させていただきます。
ふりかえりの場を設定する目的は主に以下となります。
- 場を設定することで、ふりかえりという作業に意識を集中してもらう
- ふりかえりの目的や進行を参加者と共有する
- ふりかえりの場で参加者にお願いしたいことの共有・策定をする
この工程では「チェックイン」、「DPA」という手法のワークを行いました。
チェックインとは、ふりかえりのファシリテーター(リーダー)が簡単な質問を1つして、参加者は順番に質問に答えていきます。
例えば…
「このふりかえりであなたが求めていることを一言で表現してください」
「心に浮かぶことを1つ挙げてみてください」
といった質問です。
そしてこれらの質問に対して、全員が答えていきます。どんなことでもいので、質問に対して全員が発言することで、発言に対する心理的な負荷が下がり、ふりかえりの場で誰もが発言しやすい場を作ります。
社内で開催したワークショップでは、「ふりかえりワークショップへの期待を一言で表現してください」という質問を参加者にさせていただき、それぞれ回答してもらいました。
DPAとは (Design the Partnership Alliance) の略です。ふりかえりをどんな雰囲気で行いたいかをチームで話し合って決めていく手法です。
- どんな雰囲気でふりかえりを行いたいのか
- その雰囲気を作るためにどんなことをするのか
といったことを話し合い、参加型の雰囲気作りを行うことができます。
ワークショップでは、まずは個人でどんな雰囲気でふりかえりを行うか考えていただきました。
その後、個人で考えたことをチーム内で共有し、自由に議論していただき、ふりかえりのための活動ルール決めてもらいました。
決めたルールは付箋に書き出してもらい、チーム全員が見えるところに貼ってもらい、
活動ルールを意識してふりかえりに取り組んでいただけるようにしてもらいました。
データを収集する目的は以下となります。
- 参加者と対話をし、記憶の呼び戻しを行う
- 参加者同士の共通認識を醸成してもらう
事実、感情、時系列のデータを収集してチームで共有することで、チームで共通の理解を得ることができます。事実だけでなく、感情もデータの一部としてとらえて収集していきます。そして、集めたデータから問題・課題をチームで分析していきます。この工程では、「タイムライン」、という手法のワークを行いました。
メンバーがプロジェクトやイテレーションで起きた記憶に残ることや、個人的に意味があったこと、その他の重要なイベントを1枚のカードに1つずつ書き、書いたカードを時間順に並べて整理します。そして書いてある事実や感情を理解するために、チームで共有し、議論します。タイムラインを作り、事実、感情を可視化することで問題・課題の因果関係を見つけることができます。
ワークショップでは、以下の手法でタイムラインを作成していきました。
① 個人である出来事をふりかえり(チーム全員で共通した出来事)、事実や感情について付箋に書き出してもらう
- 書き出す際に使う付箋は、感情によって色を分ける
- ポジティブな事は黄色の付箋(例:嬉しい、楽しい、面白い、新発見)
- ネガティブな事は赤い付箋(例:悲しい、イライラ、辛い)
② 書いた付箋を時系列に沿ってグループで共有し、議論していく
時系列と感情を可視化するために、このようなタイムラインを作ってデータの収集を行いました。
アイデアを出す目的は以下となります。
- 2.で得た事実(感情も含む)から意味のある情報を引き出す
- 問題の解決策や改善するためのアイデアを出す
アイデアを出すためには、チームでより多くのアイデアを出して発散したり、チーム皆で対話しながらアイデアを掘り下げていくのがコツです。
この工程では、「学習マトリックス」「ドット投票」という手法のワークを行いました。
以下の4つの観点から2で収集したデータを見て、今後改善したいこと、やっていくことを決めていきます。
- 良かったこと、続けたいこと
- 変えたいことをどのようにしたいのか
- 新しい気付きは何か
- 感謝したいことは何か
ワークショップでは、まずは個人でこれら4つの観点で気づいたことを1つずつ付箋に書き出してもらい、その後チームで共有してもらいました。共有する際には4つの観点毎に書いた付箋を分類しチームで議論していただきました。議論することで新たなアイデアが出た際には、それも付箋に書き出して追加してもらいました。そしてアイデアが出尽くした後、ドット投票を行うことにしました。
ドット投票とは、出たアイデアの絞り込みや、優先順位付けを行う投票です。一人あたりの投票数を決めて、決められた投票数を出されたアイデアにドットで投票していきます。(ドットを書いたり、ドット型シールを貼って投票していきます。)
優先度が高いと思われるアイデアに関しては、1人で複数投票することを可能にしてもOKです。全員が投票した後は集計を行い、投票数が多いアイデアを採用するようにしていきます。なお、投票数が並んでしまい、すべてのアイデアを実行することが不可能な場合は、それぞれについてなぜそれが最優先なのかをチームで議論して再投票を行います。
ワークショップでは、1人あたり2〜3票持ち、各アイデアに対して投票していただき、優先順位をつけてもらいました。
アクションを決定する目的は以下となります。
- アイデアの中から実際に行うアクションを決定する
- アクションの評価指標を作る
ふりかえりを行った結果、実際に行動するアクションを決めていきます。選ぶアクションはなるべく具体的なものを選びます。(曖昧なアクションだと、評価指標がブレたり、チーム内でのアクションに対する認識にズレが生じることがあります) そして、一度に多くのアクションを選択してしまうと、対応できる限界を超えてしまうため、チームでできる範囲のアクションに限定することが大事です。この工程では「質問の輪」という手法のワークを行いました。
チームで輪になって座り、アクション対する全員の意見を一致させるためにチームメンバーが順番に質問をしていきます。アクションについての質問が出なくなるまで、質問を行い、アクションの明確化を行います。
ワークショップでも、実際にチームで輪になっていただき、アクションについての質問を隣の人にしてもらい、隣の人は質問に対して回答する。という流れをくり返していただき、アクションを明確にしていただきました。
ふりかえりの終了の目的は以下となります。
- ふりかえりを振り返り、次回のふりかえりに繋ぐ
- ふりかえりで行ったみんなの作業に感謝を伝える
ふりかえり自体を振り返ることで、振り返りの場も改善していくことができます。
この工程では「Fun Done Learn」という手法のワークを行いました。
この手法はふりかえりの振り返りだけでなく、データの収集でも活用できます。
Fun Done Learnの領域を示す円を、それぞれ交わるように3つ以下のように描きます。
ぞれぞれの項目には以下のような事実や感情を書き出していきます。
- Fun:楽しかったこと
- Done:完了したこと
- Learn:学んだこと
ワークショップでは、ふりかえりワークショップの体験について、まずは各個人でFun、Done、Learnを書き出してもらい、その後、書き出した内容についてチーム共有し、議論してもらいました。チームで共有する際、DoneやLearnの意味について疑問が出たり、人によっては捉え方が異なっていた場合、チームで議論して認識を揃えてもらいました。
今回はふりかえりの手法の一例をいくつか紹介させていただきました。他にも様々なふりかえりの手法があります。チームに合ったふりかえり手法を選択して振り返ってみてください。