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今回は SAP BusinessObjects について、導入~ユーザサポートに関わらせていただいた経験をもとに活用のヒントをご紹介します。

この記事が、BI導入を検討している方や、自社に導入されている SAP BusinessObjects を自部門の業務に活用できるか知りたい方々の参考になれば幸いです。

BIは、現場から上がってくる情報を分析し、分析結果を経営の意思決定に活用するためのツールです。ところが実際の現場ではBIをデータ抽出のみに使用し、集計・加工・分析はExcelで行っているという声を聞いた経験があります。そのような事態を少しでも回避するためにも、SAP BusinessObjects の特徴を理解し、自部門の業務に活用するにはどうしたらよいのか探ってみましょう。

セルフサービスBIとエンタープライズBIの違い

1990年代のBIツールは利用できるシステムやデータが限られていました。なぜなら業務システムが個々に構築されており、それら複数のシステムからデータを取り込むのが簡単ではなかった為です。

2000年代に入ると全社レベルでのデータベースの統一が見られるようになります。複数のシステムを有機的に統合しようとする動きに対して、業務や組織を横断して全社全体の分析が可能となるエンタープライズBIが登場しました。このエンタープライズBIはデータソースの連携やキューブの設定など専門知識が必要な為、レポートの作成や変更はIT部門が担当しました。

全社に利用が広がるようになるとユーザ部門の中に不便を感じるユーザがでてきました。新しいレポートを作成したり既存のレポートを変更したりするたびにIT部門へ対応を依頼するのではスピード感が生まれません。またExcelを駆使すればユーザ側で対応できなくもないが、それほど時間をかけていられないといった課題を抱えるユーザが多くなったのです。

この課題を解決するツールとしてセルフサービスBIが支持されるようになりました。

【セルフサービスBIとエンタープライズBIの違い】

カテゴリ セルフサービスBI エンタープライズBI
分析要素の作成者 分析に必要なレポートやダッシュボードをユーザー部門が自ら作成する 分析に必要なレポートやダッシュボードの作成を情報システム部門に依頼する​
専門的なスキル 専門的なスキルが少ない人であっても、直感的に操作が可能​ 研修や実務経験から専門的なスキルを持っている人でないと操作が難しい​
データの信頼性・整合性 データソースをユーザー自身が自由に持ち込むことにより、データの信頼性や整合性が低くなる可能性がある データの信頼性や整合性を高めるためにガバナンスや運用体制を整えている​

SAP BusinessObjectsはエンタープライズBIとして発展を遂げてきた一方で、セルフサービスBIのニーズにも応えられる製品であると言われています。BIスイートと呼ばれる互いに関連のある独立した複数のソフトウェアを詰め合わせたパッケージ製品です。

エンタープライズBIは、さまざまなシステムからデータを集め、各種の分析機能を使って傾向を把握したり、予測を立てたりするのに有効です。業績を把握するための定型レポートなどに向いています。キューブと呼ばれる分析軸をIT部門が定義するのが大きな特徴です。

セルフサービスBIは、例えばある営業マネージャが、業績を把握するための定型レポートを細分化したり過去データや関連データと紐付ける等をおこない、売上が減少している店舗の原因を多角的かつ極めて短時間で分析したいと考えているケース等に有効です。

もしエンタープライズBIの特徴にあるような使用を想定していないのであれば、比較的新しい製品群である操作性とビジュアル化を追求したBIツールを導入した方が良いと考えられます。

SAP BusinessObjects 活用のポイント

エンタープライズBIの代表的な製品であるSAP BusinessObjectsの強みはデータの信頼性や整合性を高めるための仕組みが備わっていることです。ここではSAP BusinessObjectsを活用するために、「データ」について、本来の強みを生かすことと、ユーザニーズに応えることの両方を実現するポイントをご紹介します。

1.データの妥当性(IT所管データ)

業務によってはデータの妥当性が問われる度合いが異なります。
前述の業績データをもとに売上減少の原因を分析する場合は、軽度の誤差は許される範囲です。
しかしながら、顧客や取引先に還元するデータや、当局報告や財務諸表、人事評価に繋がるデータの場合は正しいデータである必要があります。

ここで「バリデーション(Validation)」ということばを例に説明します。次の意味があります。
・妥当性を確認すること
・「質」を検証するような良し悪しを判断することではなく「方法や過程」を検査する検証を行うこと

例えば以下のように使用されます。
【例1】製薬業界:医薬品や医療機器の製造工程や方法が、目的とするものを製造するのに最適かどうかを検証する一連の業務のことをいう
【例2】IT業界:入力場所、書式設定、データの形式等が、規定のマニュアルどおりであるか確認することをいう

IT部門がデータやキューブを構築する仕組みは「方法や過程」に多大なコストをかけています。またID管理やアクセスログ監査によるガバナンスにより改ざんなどの不正も防止されます。SAP BusinessObjectsを導入する前提としてIT部門による維持メンテナンスが欠かせません。コストはかかりますがデータの妥当性の高さを得ることができます。

2.セルフサービスETL

BIの一部分であるETL(データ抽出・加工・ロード、配置)は、SAP BusinessObjects BIスイートでは SAP Data Services, SAP Data Integrator 等にて実装されています。また他社ETL製品を採用している企業もあるでしょう。いずれにおいても先ほど述べたようにIT部門によるデータの妥当性担保の反面で、追加変更の際にユーザ部門側での応用が利かない、IT部門へ依頼する時間が多くかかるという課題があります。
この課題を解決するために、例えば SAS Enterprise Guide 等のセルフサービス型のBI製品を共存させることで、IT部門が構築したデータで不足する部分は、ユーザ部門側でデータを構築し管理する方法があります。この方法は単一のBIスイートではなく複数の製品を合わせた相乗効果としてBI製品の導入メリットを増やすことになると考えます。

セルフサービスETLのポイント
・プログラミングをする人にとって複雑な内容を簡単に書くことができる言語であること
・ユーザ部門が専用でテーブルを作成できる領域を設ける
・作業領域は十分に大きな容量を準備しておく

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。

ビジネスにデータを活用する場面は益々増えてきています。BIを利用するうえで、これまでのIT部門、ユーザ部門という枠組みはBIツールの進歩で変わってきているように感じます。この記事が皆さんにとってBIという仕組みがより身近に感じられ、活用していくヒントになれば幸いです。