第1弾では、その資料、いったい何が書かれているの?という事に触れました。
今回は、サービスデザインって結局どうやるの?というテーマで解説していきたいと思います。
話に入る前に、まずは色々前提を揃えましょう。
・そもそもこの資料でいう「サービス」とは?
・サービスデザインとはどういう意味?
上記をまず明確にしないと始まりません。
最初に、この資料ではこういった意味で使っていますよ、という私なりの解説をさせてください。
そもそも私たちが一般的に「サービス」という言葉を使う時、例えば「家族サービス」や「介護サービス」の様に、提供側から何かしら「無形の提供」を受ける、というイメージが強いかと思います。
この様に、ユーザーはサービスそのものを受けた時点を意識しがちですが、提供側からすると、実際に提供する前からすでに取り組みが始まっています。
まずはスムーズにそのサービスを知ってもらわなければいけませんし、予約や受付の仕組みが必要かもしれません。
サービス利用時のヘルプサポートなどもあるでしょうし、アフターサービス、なんていうのもありますね。
サービスが提供時だけのものではなく、その前後を含めた一連の活動、という前提に立つと、バックヤード・スタッフ・提供の仕組みなど、実にあらゆる事象がサービスを成り立たせている、という事になります。
サービスデザインという文脈での「サービス」は、この提供側から見た位置づけを含みます。本資料ではこう書かれています。
複数の接点(タッチポイント)を通した連続的なひとつの体験
つまり、サービスデザインとは、「サービス利用時の顧客体験」だけでなく、「提供企業側の仕組みや従業員体験」なども含めて「デザイン」すること、という意味になってきます。
まずはこれが大前提。
昨今、ESGに代表されるように、利益だけが企業の価値ではないという考え方が注目を浴び、提供側の従業員の体験はもちろん、地域や地球環境への配慮、社会的な企業としての在り方が求められるようになりました。
企業がサービスを提供するとき、環境破壊をしたり、無理な労働を強制していては、どれだけ優れたサービスを提供できたとしても上手くデザインされたサービス、とは言えないわけです。
話が大きくなってきました。
そもそも、そんな大きな話、どうやって実践するのでしょうか。
説明を簡単にするために、二つに分けて考えてみます。
まず一つ目は、「プロセス」。
局所的な改善・具体的な方法論ではなく、全体としての進め方です。
もう一つは、「手段」。
使えるフレームワークなどの具体的なやり方です。
資料には、サービスデザインの一般的なプロセスについて、こう書かれています。
サービスデザインの中心的な活動として、「リサーチ/アイディエーション/プロトタイピング/実装」の4つが挙げられている。
あ!何だか見たことある!と思った方。そうです、昨今よく見る考え方ですよね。
私は以下を思い出しました。
1.共感(Empathize)
2.定義(Define)
3.創造(Ideate)
4.プロトタイプ(Prototype)
5.テスト(Test)
1.利用状況の把握と明示
2.ユーザーの要求事項の明示
3.ユーザーの要求事項を満たす設計による解決案の作成
4.要求事項に対する設計の評価
1.情報を共有する:Unpack
2.スケッチする:Sketch
3.決断する:Decide
4.プロトタイプを作成する: Prototype
5.テストする:Test
サービスデザインのプロセスは、デザイン思考を代表とするいわゆる「デザインプロセス」と思想は同じ、と考えて良さそうです。
それでは、大きな枠組みであるプロセスが分かった所で、どの様な手段で行っていくのでしょうか。
そもそもサービスデザインには、これをしないとサービスデザインじゃない!といったような定義はありません。
やり方は独自に開発しても良いですし、もちろんデザイン以外のフレームワークを使っても良いわけです。
前述した様に、根底にあるのが”様々なステークホルダーの体験をデザインする”という思想なので、UXデザインを勉強された方ならマッチする手法を色々思いつくかもしれませんね。
大きな枠組み=プロセスの中で、より良いサービスに必要な情報や事象を決め、様々な手段を通してみんなで作り上げていく、という所を押さえれば良さそうです。
資料には、以下の様な手法が紹介されています。
・ペルソナ
・カスタマージャーニーマップ
・ステークホルダーマップ/サービスエコロジーマップ
・サービスブループリント
・ユーザーシナリオ
・ペーパープロトタイプ/モックアップ
・ユーザーテスト/ユーザビリティテスト
今回はサービスデザインってどうやるの?というテーマで資料を読み解いてきました。
サービスとはユーザーから見た提供時の事だけではない事、
サービスデザインとは、サービスとしての方針や企業としての在り方まで含めた、大きな枠組みでのデザインである事が解説されていました。
また、プロセスや手法は、デザイン思考やUXデザイン手法を参考にできること、でも手段にとらわれず自由に開発していけば良いことも解りました。
今回の内容は、まさにサービスデザインをやりたい!と思っている企業やチームにおいて、ステークホルダー間の認識や前提を揃えるという時に使えます。
でも!でも・・!
これが分かったからといって、さあ、明日から「サービスデザインやろう!」となるでしょうか。。
もう少し、具体的な方法が知りたいですね!
そこは、もちろん経済産業省チームも押さえています。きちんと、導入についての章を用意してくれています。
次回は、本資料の「効果的な導入実践の在り方の検討」を参考に、企業が初めの一歩をどう踏み出し、実際のビジネスにどう活かすか、について考えたいと思います。