システムズエンジニアリングセンター(SEC)1年目のとくです。
去年までアジャイルという言葉も聞いたことがなかったアジャイル初心者ですが、半年ほど前からアジャイルについて学習を始めました。
アジャイル(特にスクラム)を学習していると「ふりかえり(レトロスペクティブ)」という言葉をよく聞くのではないでしょうか。
ふりかえりはその名の通り直近の作業をふりかえってよかった点や課題の解決策などを話し合い、次につなげる活動です。アジャイルは短いスパンで計画からリリースまでを繰り返し行っていくため、ふりかえりで見つけた改善案をすぐに実行に移せるという利点があります。
そこで今回は、アジャイルに欠かせない「ふりかえり」について目的に合わせた様々な手法をご紹介していきたいと思います。
ふりかえりのやり方は様々あり、チームに合った効果的なふりかえりができれば、業務の改善やチームビルディングに役立ちます。ふりかえりはアジャイル開発だけではなく、ウォーターフォール型の開発や開発以外の業務でも取り入れることができます。また、1人でも行うことができる手法もあるため、いいと思うものがあればぜひ実践してみてください。
今回取り上げるふりかえり手法
この記事では、以下の5つのふりかえりについてご紹介したいと思います。
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- YWT(やったこと/分かったこと/次にやること)
- Fun/Done/Learn
- PDCA(Plan/Do/Check/Act)
- 4行日記
- KPT(Keep/Problem/Try)
現在私が参加しているプロジェクトはアジャイル開発ではないのですが、入社時に行った研修ではKPTによるふりかえりを行いました(2週間で3スプリント※回すスクラムのような開発でした)。
そこでKPTの紹介では、研修中に感じたメリット・デメリットも併せてお伝えできればと思います。
※スプリント…一定量の作業を完了させる際の、短く区切られた期間のこと。スクラム開発では、顧客の要望を優先順位をつけて管理し、その中から毎スプリントごとに実装するものを決めて反復を繰り返しながら目的を達成する。
Y:やったこと、W:わかったこと、T:次にやることの頭文字を取った振り返り手法です。
まず個人が行った出来事をふりかえってやったこととして挙げていき、事実の把握を行います。その次に、やったことから何がわかったのか学びや気付きを理由や背景と共に深堀りします。最後に次にやることとして、分かったことから次にどのような行動に移すべきかを考えます。
YWTは業務を軸としたものではなく、人を軸としたふりかえり手法です。業務の反省やコントロールなどの進捗管理に使用するのではなく、自律的な人の成長を目指す目的で使用し、個人の能力を信じることで、チーム全体での学習や成長を目指していきます。
チームが行ったことを、Fun/Done(またはDeliver)/Learnという3つの軸でやったことを見直し、ふりかえりを行う方法です。
まず、出来事ややったことを付箋などに書き出し、その次に書いた内容をチームメンバー全員で下記のようなFun/Done/Learnのボードに貼っていきます。その後スプリントや業務全体としてどうだったか当てはまる領域を一人ずつ選び評価を行い、最後にボードを眺めながら次のスプリントやプロジェクトでどの領域を狙いたいかを話し合い、そのための改善アクションを考えます。
2018年に作られたふりかえりの方法で、楽しかったことや学んだことなどポジティブな側面からプロジェクトをとらえていくことができます。各領域の定義をはじめから確定せずふりかえりを行うことで、チームで認識をそろえていく機会にすることもできます。
ボードに書き出す際、楽しい+学ぶことができた内容については円の重なり合う箇所に貼るなどして現状の可視化を行います(貼られた付箋の数で学ぶことは多いが楽しみの少ないプロジェクトになっているなど分かり易い)。Fun/Done/Learnすべてがそろった中心の部分が一番良い状態ですが、チームによってどこを重視するかを話し合ってから改善案を出していくことで、チームが直面している状況に合わせて必要なものへ狙いを定めていくことができます。
Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善の4つのプロセスを繰り返し行い、業務の改善や品質向上などを進める手法です。
はじめにPlanとして目標を設定し、その目標を達成するための計画を作成します。次にDoとしてPlanで作成した計画を実行に移し、CheckでPlanとDoの分析を行い計画通りに進んだのか、またその計画は適切であったのかの検証を行います。最後にActとしてCheckでの分析を基に次のPDCAサイクルで目標を達成するための改善策を考えます。
PDCAはふりかえりだけでなく、初めの計画から実行、ふりかえり、そして改善まですべてが含まれています。目的を達成するために、PDCAサイクルを適切に回していくことが重要であるため、PDCAサイクルを回していくこと自体が目的にならないように意識する必要があります。
今日起きた事実、気づき、気づきからの教訓、宣言の4つの項目を1行ずつ書き出してふりかえる手法です。その日起きた事実を書くことでその日の内にふりかえりを行うことができ、毎日繰り返しを行うことで、頭の中をアウトプットして整理することができます。また、宣言を書き出すことにより、宣言の傾向から自分の理想の姿や目標を確認することができます。
宣言を書く際は現在完了進行形で自分が目標とする姿を「私は○○しています」という形で書くことにより、宣言を現実に変えていくよう潜在意識への働きかけが行われるそうです。
K:Keep、P:Problem、T:Tryの頭文字で、実施方法ははじめに今までの業務でよかったことや続けていきたいことをKeepとして挙げていきます。次に業務を行う中で、問題と感じたことや、よくなかった事をProblemとして書き出し、最後に次回のスプリントまたは今後の業務で挑戦することをTryとして書き出します。
この手法は、私自身も研修期間中のミニプロジェクト(5人チームで簡単なシステム開発を行う)のふりかえりとして使用しました。直前のスプリントを見直すことができるため、スプリント内で表面的な解決はできたもののうやむやになってしまった課題を再度問題提起することで、メンバー全体を巻き込んだ根本的な解決に繋げていくことができたように感じます。
一方で、問題点ばかりが挙げられ、よかった点が出にくかったこと、ただの反省会のような雰囲気になってしまう結果にもなりました。メンバー全員が研修生でKPTの知識も乏しかったことが原因ではあると思いますが、ファシリテーターが先導することで、よかった点にも目を向けてポジティブで学びのあるふりかえりを行う必要があったのではないかと感じています。
また、この記事を書くにあたり、現在アジャイル開発プロジェクトに取り組んでいる先輩方からKPTを行う際の注意点について下記のような意見もいただきました。
- Tryはすぐに行動に移せるものにすること
- Tryは具体的に書くこと(意識する・気を付けるなどの具体策が分からない言葉を使わない)
- Problemは個人の問題として考えやすいためチームの課題としての認識を持つこと(個人の知識不足などの原因に結び付けないこと)
- Tryの終了の定義まで決めること(ずるずると続けない)
- Keepに対するTryも考えること
このような点に気を付けながらKPTを行うことで、的確なTryを持ちながら次のスプリントを改善していくことができます。
はじめにも書きましたが、ふりかえりはアジャイル開発だけでなく、ウォーターフォール開発や開発以外の業務にも取り入れることができます。また、今回は様々なふりかえりフレームワークを紹介しましたが、これらに囚われることなく、自分たちのチームに合わせてアレンジを加えることも可能です。
今回紹介させていただいた手法などいろいろなふりかえりを試すことで、それぞれのチームに合った手法を見つけ、業務を少しずつ改善し、チームの結束力を高めていってみてください。