こんにちは。クレスコ・デジタルテクノロジーズの曽根です。
ネットワークエンジニア歴 18年くらいです。
これまでの経験を通して、私はネットワークのスキルアップのために規格(プロトコル)を勉強することが非常に有効であると考えています。
その理由について共有します。
※最後に注意するポイントも記載しています。
- ネットワークの規格とは
- 規格の知識は汎用性が高い!
- 初めて使う機器や機能でも規格を知っていれば大丈夫!
- ネットワーク機器の標準化団体について
- さいごに
ネットワークは、様々なベンダーの機器で構成されています。様々なベンダーの機器が相互に連携することで、サーバーやパソコンなどのエンドポイント間の通信を実現しています。
このとき、各ベンダーが通信の制御方法を独自に決めるのではなく、決められた「ルール」に則って通信を制御するよう定められています。
ものすごく簡単に言うと、この「ルール」がネットワークの規格です。
またこの規格は国際的な標準化団体が作成していて、世界的に共通化されています。
少し話が変わりますが、ネットワークのスキルアップを目指すときに「ネットワーク系資格取得」や「機器を操作して操作方法を確認」する人は多いと思います。
逆にネットワークの規格を読んで勉強する人は少ないのではないでしょうか。
確かに資格や機器を操作した経験に比べて、規格を理解していることは評価される機会が少ないです。
ですが、実際に仕事をするときには、規格勉強で得た知識はとても役に立ちます。次からは、私がそのように考える理由を記載します。
例えば、ルーティングプロトコルでOSFP(Open Shortest Path First)を使用する場合、IETFが定めている規格RFC 1131のP.94【C Configurable Constants】を読めば、どのような設定パラメータがあるのか知ることが出来ます。
このドキュメントに記載されている内容は、設計する機器のベンダーによって変わることはないです。そのため、今まで使ったことのないベンダーの機器を設計する場合でも同じ知識を利用することが出来ます。
具体的には、設計において特定の機器をOSPFマルチアクセスネットワークの指定ルータに選出されないよう設計したい場合は、P.95のRouter Priorityに記載されているようにプライオリティを「0」に設定すれば良いことが分かります。
実際の設定方法は次のようにベンダー(ここではシスコシステムズ、ジュニパー)ごとに異なります。
※設定方法は機種やOSバージョンにより異なるのでマニュアル参照ください
■シスコシステムズ
interface <インターフェイス名>
ip ospf priority 0
■ジュニパー
set protocols ospf area <エリアID> interface <インターフェイス名> priority 0
それでも設定によって、RFC 1131のP.80【A Packet Formats】【A4 The Hello packet】に記載されているRtr Priの領域が「0」になることと、その結果として指定ルータに選出されなくなることは、ベンダーが異なっていても同じです。
このように規格の知識は、利用する機器のベンダー、さらに機種やOSが変わっても共通であり汎用性が高いです。
ネットワークの機能は非常に多く、新しい機能も次々と開発されています。
そのため、使ったことのない機能を設計・導入することも多いです。
初めて使う機能を設計して導入するときは、うまくプロジェクトを進められるか心配になる人も多いと思います。
でも規格を知っていれば大丈夫です!
なぜなら機能で使用されている規格自体は、古くから存在するもので良く知られている場合が多いからです。
私の経験談ですが、数年前にGSLB(広域負荷分散)機能を使用し、かつ利用する機器は国内導入事例がほぼゼロという案件がありました。
さすがに詳細設計以降のフェーズでは、機器のマニュアルを確認し、検証環境を組んで動作確認をしましたが、初めて使う機器や機能でもトラブルなく対応出来たのは規格を理解していたおかげだと思います。
これまで規格を学習するメリットを記載しましたが、ここではネットワークの規格を決めている代表的な標準化団体を紹介します。
インターネット技術に関わる規格の標準化団体です。このブログでも例として使用していますが、標準化した規格はRFC(Request For Comments)と呼ばれるドキュメントで公開されています。
電気・情報工学分野の学術研究団体で各技術の標準化もおこなっています。例えばイーサネットや無線LANの規格を作成しています。またドキュメントは有償であることが多いです。
ここまでベンダーが異なっても動作は規格で共通化されていると記載してきましたが、本当の細かい部分では微妙に動きが異なることがあります。
これは同じ規格を使っていてもベンダーによって実装方法が異なるからです。
場合によっては規格に記載されている全ての機能を実装していない機器もあります。
またネットワークの全ての機能が規格化されているわけではなく、ベンダー独自の機能も存在するので注意が必要です。
それでも規格を学ぶことが、ネットワークのスキルアップに有効であることは変わりません。ここでは書ききれませんでしたが、トラブルシューティングでも規格の知識が役に立ちます。
このブログを読んでネットワーク規格に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。