• はじめに(ごあいさつ)

 

こんにちは。私たちチームNTNは、クレスコ・デジタルテクノロジーズ プロフェッショナルサービス本部第3部(PS3部)に所属するインフラ・セキュリティエンジニア3名のユニットです。PS3部は主に情報セキュリティ関連の業務に取り組んでいて、NTNメンバーもサイバー攻撃対策/保護、インシデント対応、セキュリティトレンド分析、コンサルティングなど、さまざまなプロジェクトにチームで取り組んでいます。
日々の業務においてプロジェクトを円滑に進めるため、チームのパフォーマンスを高めることが重要だと感じることが多くあります。
チームのパフォーマンスを高める方法を考える中で、後述する「心理的安全性」というキーワードに行きつきました。
そこで今回は、心理的安全性についての理解を深めるため、心理的安全性ゲームをやってみましたので、その結果をご紹介します。

  • 心理的安全性(psychological safety)とは

心理的安全性ゲームの紹介の前に、まずは「心理的安全性」について簡単に説明します。
「心理的安全性」とは、ビジネスに関する心理学用語(組織行動学を研究するエイミー C.エドモンドソンが1999年に提唱)のひとつで、英語の「サイコロジカルセーフティ(psychological safety)」を和訳したものです。他者からの反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出せる環境のことを意味します。
「チームの心理的安全性」は「チームの中で対人関係のリスクをとっても安全という、チームに共有される信念のこと」とされています。

Google社が2012年から約4年の歳月を費やした「プロジェクトアリストテレス」は、「効果的なチーム構成を可能とする条件は何か」の答えを見出すことを目的に始動したプロジェクトです。①生産性の高いチームが持つ共通点 ②成功因子 の2つを調査分析した結果、チームの生産性向上には個々のパフォーマンスよりも、集団的知性のほうが大きく影響することがわかりました。そして心理的安全性こそ、チームの生産性を高める唯一無二の成功因子であることが判明しました。2016年に発表されて以降、「心理的安全性」が各方面、とくにIT業界において注目を集めるようになりました。

参考:Google re Work – ガイド 「効果的なチームとは何か」を知る
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

日本でもチームのパフォーマンスを高めるためには、心理的安全性を高めることが重要という認識が広まりつつあります。
Google トレンドで「心理的安全性」というキーワードがどれくらい検索されているか調べてみたところ、2016年以降検索数が年々増加し、近年注目度が増している状況であることがわかります。

心理的安全性 – Google トレンド
https://trends.google.com/trends/explore?date=today%205-y&geo=JP&q=%E5%BF%83%E7%90%86%E7%9A%84%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7

 

  • なぜゲームをやってみようと思ったか

心理的安全性の重要性はなんとなく分かったけれど、実際にチーム内で心理的安全性を高めるにはどうしたらいいのだろう、そもそも心理的安全性についての共通理解ってあるのだろうか。というモヤモヤがあり、色々調べてみたところ、心理的安全性に関するゲームがいくつかあることがわかりました。まずはゲームを通じて体感してみるのがいいのではないかということで、チームでやってみることにしました。

  • 「心理的安全性ゲーム」とは

「心理的安全性ゲーム」は、やっとむさんこと安井 力さんが制作したカードゲームです。4〜5人のチームで、問題を訴える人(平和を乱す役)に対して周囲はどう反応するかをシミュレーションし、心理的安全性についての理解を深めていきます。
概要を説明すると、参加者は同じチームメンバーという設定で、伏せられた2種類のカード(状況カード、発言カード)をオープンし、カードに書かれた内容に応じたシチュエーショントークを各自が行います。全員のトークが終わった後にその内容を振返って、心理的安全性について考察し、どのように将来につながりそうかを評価するというものです。

参考:心理的安全性ゲーム(https://games.yattom.jp/safety

このほかにも、心理的安全性を体感できるゲームとしてHEART QUAKE社が開発した「ベストゲーム」というゲームもあります(※)。

今回は、無料かつオンラインでできる「心理的安全性ゲーム」をやることにしました。

※「ベストチーム」
さまざまなビジネスゲームを開発する株式会社HEART QUAKE(ハートクエイク)が開発した、心理的安全性を知り、高めるゲームです。各チームが一つの「企業」になりきって、業績拡大と人間関係のバランスをどのように保つかを考えていくというものです。

参考:心理的安全性を知り、高めるゲーム型研修「ベストチーム」 | 株式会社HEART QUAKE(https://heart-quake.com/article.php?p=7265

  • オンラインでの心理的安全性ゲームの進め方

【ゲームの流れ(全体)】

今回はオンラインで実施するため、まずはWeb会議システムで会話を始めました(今回は、Google Meetを利用しました)。

ゲームの進め方については、ゲームの解説スライドを見ながら、オンラインで実施する場合に読み替えつつ確認していきました。
続いて、チーム設定、順番を考えました。
今回の設定は「CSIRTメンバー」と仮定し、T氏→N(1)氏→N(2)氏の順番としました。

※CSIRT(Computer Security Incident Response Team)とは、セキュリティ上の問題として捉えられる事象であるインシデントが発生した際に対応するチーム
※CSIRT活動 私たちの取組み 株式会社クレスコ・デジタルテクノロジーズ
https://www.cresco-dt.co.jp/initiatives/csirt/

いよいよ、実際のゲームに移ります。

      • ゲームの準備
        1. 誰かひとりがasobann (https://asobann.yattom.jp)にアクセスします。
        2. 空っぽのテーブルが表示されたら、URLをコピーして他の参加者に共有します。
        3. 参加する人はURLをアクセスして、自分の名前を入れて「参加する」を押します。
        4. 左の「テーブルに出す」から、「心理的安全性ゲーム」を選んで「追加」します。
        5. 左の「手札エリアを作る」で、自分の手札の置き場所を作り、複数枚のカードが置きやすいように広げておきます。
      • ゲームの進め方(オンラインで実施する場合)
        1. 状況カードのエリアの「シャッフル」ボタンを押します。
          発言&オプションカードエリアの「シャッフル」ボタンを押してから「広げる」ボタンを押します。
        2. 最初のメンバーが、まず「平和を乱す役」になります。
        3. 平和を乱す役の人は状況カード1枚を自分の手札エリアにドラッグで移動させて、ダブルクリックで開きます。
        4. 平和を乱す役の人は、できるだけ真に迫った演技でチームに口頭で報告します。
          そのとき、手札エリアから状況カードをドラッグでテーブルに移動します。
        5. 他のメンバーは順番に、手札エリアから発言カードを1枚えらび、迫真の演技で反応します。
          1) Optionカードは、実際の発言のカードと同時に出して、演技します。
          2) Optionカードを使ったメンバーは、テーブルにある未使用の発言カードを手札エリアに補充します。
        6. 反応に使った発言カードとオプションカードは、状況カードと並べて見えるようにテーブルに置きます。
        7. 平和を乱す役の人は、すべての反応を聞いた後で全員の反応に対して自分がどう感じたかを一言で述べます。
        8. そのうえで平和を乱す役の人は、今回の経験が、未来の自分の行動にどう影響しそうか考え、ボードの上(未来のチームのすがた)に石を置きます。
          6つのエリアそれぞれ、当てはまれば石を1つずつ置きます。すべてのエリアに計6個置いてもいいし、当てはまらなければ1つも置かなくてもいいです。
        9. 終わったら、次の人が平和を乱す役の人となって、繰り返します(最初に決めた順番通り)。
        10. 一周して、全員平和を乱す役を1回やったら終わりです。
  • オンラインでやってみた内容
      • ゲーム1回目(平和を乱す役:T氏)

T氏:CSIRTに最新のセキュリティ製品を導入したい!
※状況カード:新しもの好き「いま話題のアレやりたい」

N(1)氏:「あなたが導入すれば?」(ストレート表現ではなく、「自分は詳しくないからもう少し調べてメリデメとか整理してからもう一回教えて」とお願いする形に工夫して伝える)
※発言カード:「おまえ何とかしろ」

N(2)氏:(ぶっきらぼうに)「落ち着いて考えて」(話題だからといって飛びつかずに費用対効果も検討してから導入したほうがいいと、冷静になってもらうよう促した)
※発言カード:「落ち着いて」
※オプションカード:「ぶっきらぼうに言う」

感想(T氏):チャレンジに対して、周りが反対しているような構図に見えるかもしれないが、頭ごなしにダメという言い方ではなく、受け取りやすい形に言い変えたり、率直に意見(前向きにとらえつつも言うべきことは言う)したりしている点は、お互いから学ぶことができる素地としていいのではないかと思いました。
(未来のチームのすがた)石の置き場所:「お互いから学べる」の「少しそうなる」に1つ

      • ゲーム2回目(平和を乱す役:N(1)氏)

N(1)氏:(社内からのインシデント報告への1次回答の手順を教えてと言ったメンバーに対し)前にも説明したでしょ?
※状況カード:耳タコ「その質問前にも答えたよね」

N(2)氏:(目をそらして※平和を乱す役への反感)「僕がやります」(質問者をかばう)
※発言カード:「僕がやります」
※オプションカード:「目をそらして言う」

T氏:(質問者への励まし)「一緒にやろう!」(場を和ます)
※発言カード:「一緒にやろう」

感想(N(1)氏):普段はこういう発言をすることはないが、そういう発言をしてしまったら周囲の反応や協力的な姿を見て嫌な気持ち(自己嫌悪)になるのだろうなと感じました。
余裕がなくて反射的に雑な発言してしまうことはあり、そんなときでもチームの仲間にフォローされてハッと我に返ることがあります。そう促す発言をもらえたと感じ、素直に受け入れて、改善したいと思えました。
(未来のチームのすがた)石の置き場所:「より強く助け合える」の「少しそうなる」に1つ

      • ゲーム3回目(平和を乱す役:N(2)氏)

N(2)氏:昨日やることになっていたアップデート作業を忘れていました!
※状況カード:勘違い「大事なアポすっ飛ばしちゃった!」

T氏:(まだアップデートしていないのかと思いつつ、淡々と)「まあ大丈夫だよ」
※発言カード:「大丈夫だよ」
※オプションカード:「棒読みする」

N(1)氏:(そういうこともあるよと思いつつ、全面的に肯定するわけにもいかないので)顔を背けて笑う
※発言カード:「笑う」
※オプションカード:「顔を背けて言う」

感想(N(2)氏):
失敗を責めず、ひとまずフォローする姿勢をみせてほしいと思いました。表立って協力してくれる人がいなかったので、今後助けを求めづらいと感じました。
(未来のチームのすがた)石の置き場所:「助けを求められる」の「少し逆になる」に1つ

  • ゲームをやってみた感想

T氏
このゲームは、心理的安全性が低い環境でみられる4つの不安「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」をネガティブなカードで再認識したり、心理的安全性が高い環境でみられる4つの要素「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」をポジティブなカードで体感できたりするのではないかと感じました。
例えば、1回目の「いま話題のアレやりたい」という提案・意見は、「無知だと思われる不安」や「邪魔をしていると思われる不安」がある環境だと、そもそも発言しようとも思わないし、何も言わないことが得策となってしまいます。もし、勇気を振り絞って提案できたとしても、不安を増強させるような反応であれば、さらに心理的安全性が低くなり、そのチームは負のスパイラルに陥ってしまうと考えられます。
反対に、提案・意見を「挑戦」「新奇歓迎」と受け止める反応であれば、次から不安なく提案・意見がしやすくなり、意見を活発に言い合える、生産的で前向きなチームにつながると考えられます。
手札が限られていて判断に困るカードもあるため、効果的に心理的安全性について実感するのは難しいかもしれませんが、工夫次第では、チームの現状を心理的安全性が低いと気づいて改善するきっかけにはなるのかなと感じました。

N(1)氏
まずはゲーム評になってしまいますが、そもそも各プレイヤーに配られる発言カードの内容が、場をざわつかせる系(「舌打ち」「スルー」「笑」など)が多めのため、自分の思いにフィットしにくい仕様になっていると思いました。その上に、ゲーム回を重ねるごとに手持ち発言カードが減っていくため、自分の意思とはかけ離れた発言や行動をさせられてしまうようになりがちだと強く思いました。今回も最終ゲーム(3回目)の発言は、おおよそ各プレイヤーの普段の人格からはかけ離れた役を演じさせられていて、全員が苦労しているように感じました。
今回はこうした別人格の役をさせられるという不自由さも、このゲームの醍醐味ととらえる立場をいったんとることとして、普段から自分の思いとは異なる発言/行動をする人のこともよく見て、その動機を自分なりに理解し、自分ならこうするといった意見がないと、こうした別人格役にリアリティを与えられないし、適切なレスポンスもしにくいのかなと思いました。
まとめると、このゲームの設計にこうした意図があったのかわからないですが(きっとあったはず?!)、こうした自分なら/普段ならしないであろう場をざわつかせる発言/行動に対する「その心は?」の部分を理解しようとする姿勢も、チームの心理的安全性を考えるうえで必要な要素なのかなーと改めて考えた次第です。

N(2)氏
最初、タイトルに“ゲーム”と付いていたので、プレイヤー同士で何かを競い合うような内容を想像していました。しかし、実際にプレイしてみるとそういった要素はなく、順番にトラブル(イベント)の当事者役になり、他のプレイヤーからのリアクションに対してどう感じたか発表し合う学習ツールのようなものでした。
ゲーム中に起きるトラブルはランダムで決まります。また、周囲のプレイヤーが取るリアクションは、配られる発言カードの内容に沿ったものでなくてはいけません。つまり、ポジティブなリアクションばかりだけではなく、カードによってはネガティブなリアクション(冷ややかな発言や態度)を取らなければならなくなります。これには、はじめてプレイしたときはかなり戸惑いました。ただ、ポジティブなリアクションとネガティブなリアクションの両方を行うことで、それぞれのリアクションがチームに与える影響を学ぶことができたと思います。

  • まとめ

今回は心理的安全性ゲームをオンラインでやってみました。リアルで実施した場合に比べて、実際の相手の反応が分かりづらいというデメリットもありますが、気軽に実施できる点、カードの配布が簡単な点、リモートワーク下での心理的安全性について考えられる点など、メリットも多くあると感じました。
実際にやってみようと思われた方は、まずはお試しにオンラインでやってみるのはいかがでしょうか。
もし、チーム内で心理的安全性が低いと感じている方がいらっしゃれば、ゲームを通じて4つの不安「無知だと思われる不安」「無能だと思われる不安」「邪魔をしていると思われる不安」「ネガティブだと思われる不安」を再認識して、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」につなげていくきっかけとしていただければ幸いです。