技術研究所の(あ) です。
クレスコのウェブページのニュースのところにも出ていますが、我々は最近、人工知能 (機械学習) を用いた眼の病気の画像診断という課題に取り組んでおり、ここまでの成果に関して先日、学会発表をしてきました。

 

今回はその内容を簡単にご紹介します。

光干渉断層計 (OCT)

対象としたのは、OCT と呼ばれる検査機器で得られる画像です。Optical Coherency Tomography の頭文字で、光の干渉を使って立体像を得る装置、といったところです。眼科では、これを使って網膜などのある眼底の様子を、断面を切って見ることができます。造影剤などを用いる必要がなく、患者さんにあまり負担を掛けずに詳しい情報が見られるので、たいへん便利で重宝する検査機器なのです。

そんな便利な機器なのですが、出てきた画像から適切に情報を読み取るのには経験が要ります。なにがしかの症状が現れているのか、それがどんな病気によるものなのかを判断せねばならないのですが、可能性のある病気の種類は多数あります。似たような症状でも、病気の種類が違うと治療法もがらっと違うこともあるそうです。判断を間違えて治療すると、効果がないどころか悪化させてしまうかもしれません。

そこで、OCT画像と経験を積んだ医師による判断で機械学習を行い、OCT画像から病気の種類の判断情報を提供することで経験の浅い医師を補助することができないか、というのが今回の取り組みです。

我々はITの技術を持っていますが、もちろん眼科の医師ではありません。この研究は、名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学の安川准教授を始めとする方々との共同研究として進めています。互いの知識を持ち寄り、それぞれ単独ではできない研究を進めるという、よい形の連携ができたと思います。

研究会で発表!

研究はまだまだ道半ばではありますが、ここまでの結果としてはなかなかよい感じの正答率を
出すことができました。そこで、その結果をまずは医療画像系の研究会 (他の研究者などと意見交換をしより研究を進めるために、速報的な内容を発表する場) で発表しようと、投稿した先が電子情報通信学会の医用画像 (MI) 研究会です。年に何回か開催されていますが、投稿したのは 2016年11月14日(月)に鳥取大学で開催された回です。

タイトルは「光干渉断層計による画像と機械学習を用いた眼病の判別」で、プログラムはこちらから見ることができます。

参加者は、きちんと数えていませんが十数名~二十数名くらいだったでしょうか。殆どが大学で研究をしている方のようですが、他の企業の方もいらっしゃいました。他の発表をみると今回は同じように眼科領域だったり同じような機械学習を用いたり、というものはなく、また、知り合いもいないという状況での発表でしたが、内容は聴衆には興味を持っていただけたようで発表後の質疑は活発でした。

他の発表に関しては、質問できるほどの知識のない^^; 分野の研究がほとんどでなかなか難しい内容だったのですが、興味深く聞くことができました。個人的には、招待講演の鳥取大学の先生の染色体工学技術についての話がいちばんおもしろいものでした。

学会に参加するということ

ところで、そもそも研究者はなぜ学会に参加し、発表したりするのでしょう?それに関する記事がちょうど最近出ていましたので、引用します。

この中で東京大学の五十嵐教授が述べているように、「研究とはコミュニティ、すなわち、同じ分野で研究を行う人たちとのつながりの中で行うもの」なのです。個々の新たな知見は個人やグループで見つけ出したり創り出したりするものですが、それは過去の他の人たちの多数の知見の上になされたものであり、新たな知見も、それを他の研究者たちに提供することにより、その上にさらに新たな知見を積まれ、そうして社会・コミュニティ全体の、大きな知見の集合ができあがって行くのです。

われわれが研究開発して得た知見もこれまでの他の研究者たちの知見の上にあるものです。もちろん企業なのでそれを元にビジネスも行いますが、多少なりとも社会・コミュニティ全体の知見の拡大・発展のために還元せねばなりません。今回発表した成果は小さなものかもしれませんが、そうした発展の一助になればと思いますし、この先さらに研究開発を進めて、こうした学会発表で、あるいはもちろん実用化し多くの人々の健康に寄与するという形で、社会に貢献していければと思います。