はじめまして。PSの担々麺です。

 

3月9日、10日にPM学会が主催する春季研究発表大会が開催されました。
プロジェクトマネジメントに関する論文の発表の場ということで、半期に1回開催されています。毎回80本近い論文が発表されており、弊社からも2本の論文を発表しました。

今回はそのうちの1本についてご紹介したいと思います。

ヒューマンエラー排除に向けたヒヤリ ハット横展開ディスカッションの事例 ~メタ認知的アプローチによる一考察 ~

クレスコ プラットフォームソリューション事業部 藤田智、山内貴弘

もともとあるお客様の維持保守プロジェクトで、ヒューマンエラーが起因するトラブルを発生させてしまったことから、どうしたらヒューマンエラーをできるだけ排除することができるか。そのための活動をしてきました。

システム作業をチェックできるようにリスクレビュープロセスを決めたり、朝会でPMから毎日の行動について注意を喚起したり、チェックリストを作成したりといろいろやってきました。その中で、それぞれのメンバーの意識をどのように改善することができるか。言ってみれば、他人の起こしたトラブルやヒヤリハットを自分の事として、自分も注意していこうという意識にすることはどうしたらできるだろうか。と考えてきました。

その中で、ヒヤリハットの横展開ディスカッションということに行き着きます。毎週、プロジェクトメンバーを4~5人集めて、事業部長、部長、PMと車座のミーティングをして、現場の生の意見を聞くとともに、改善方法や、動機付けの方法をフランクにディスカッションしてきました。

こうした背景のもと、今回の学会発表があります。

この研究では、海保博之,田辺文也(1996)の指摘にある「人は,エラーをしてはいけないところではエラーしないように気をつけて行動する」とし,「これが自己モニタリング(自己調整)に他ならない」という点に着目して、こうしたメタ認知能力を高めることで「危険なので気をつける」「エラーしそうなので慎重に行動する」という意識を高めることをディスカッションの中で実践し、ディカスッションの場でいかなる事例や質問を展開すれば良いのかを検討し、ヒヤリハットを自分事とするための討論の在り方に対する示唆を得ようとしています。

少し、メタ認知というものを説明しますと、深谷達史(2016)は「メタ(meta-)」とは「一段上の」といった意味を持つ接頭語であるので、メタ認知とは自分の知的な働きを一段上から理解したり調整したりすることを意味するとし、これは自分自身の思考や学習のマネジメント能力ともいえるだろうとしています。
実際のディスカッションのやり取りは、談話分析という手法で質的に分析しました.ディスカッションの応答パターンを分類すると、次の5つになり、それぞれにメタ認知をどのように活用して答えたかを分析しました。

A.だんまり、意見なし(停止)
B.行為そのものの改善についての会話(改善)
C.行為を誘発した別の問題の指摘の会話(指摘)
D.行為を各自の経験に置き換えた会話(内省)
E.行為における問題の視点を上げる会話(拡張)

その結果、熟練者は改善や指摘の発話は多いが、内省の発話は少ない。非熟練者は内省が高い。イメージを喚起するような質問には、問題の視点を上げるような会話(拡張)の意見が出され、これが自己コントロールにつながるという仮説を得ました。

・当日発表した感想

今回の発表では、2つの質問がありました。

1つは、上位マネジメントも含めてディスカッションで本音が聞けるのかという内容です。これはホントの話ですが、皆さんディスカッションでは、結構本音でまずかった点も含めて、意見を言っています。つまり、それだけ言いやすい環境を作ってきたというのは自慢してもよいことと感じました。

もう1つは、こうしたディスカッションの結果、実際にトラブルは減ったかというご質問です。 これもはじめてから、トラブルゼロを連続半年続けている点をお話しました。実際には小さなハッとする例はありますが、大きなトラブルにつながることになっていないのは誇れることではないかと思います。 ただ、明日起こしてはいけませんが。

こうして、今回の学会発表をしてきました。
プロジェクトマネジメント学会は、実務者が多い学会ですので、質疑応答でも実務に即したものが多かったのが印象的でした。 このような実際の仕事での悩みや苦労したことを学会という場で整理して、自分たちなりに咀嚼して発表する機会というのはとても良いと感じました。また機会をつくり、より多くの経験や研究を共有したいと思います。

次回は2本目の論文についてご紹介します。

お楽しみに!