読書の秋に身近なUIを考える

読書の秋に身近なUIを考える

お久しぶりです、UXデザインセンターの『ab』です。
読書の秋にちなんで、今回は1冊の本をご紹介したいと思います。

はじめに

唐突ですが、こちらは我が家の照明スイッチと部屋の間取りです。

どこにでもあるようなありふれた間取りと照明スイッチなのですが、
入居当時はもちろん、実は未だに意図しない部屋の照明スイッチを押してしまうのです…。しかもかなりの高確率です(汗)
上図をよく見ていただくと分かる通り、照明のある部屋とスイッチの配置がバラバラ。
ついでにスイッチの文字サイズもネーミングもなんだか残念な感じ…。
要するに、UIがいけてないのです。
しかし、入居して間もないならまだしも、もう何年も利用しているUIだというのに何故覚えられないのか?
こんな悶々とした疑問を晴らしてくれた一冊の本があります。
それが「ファスト&スロー/ ダニエルカーネマン著 」です。

 

ファスト&スローの概要

ざっくりとまとめると、人はどのようにして意思決定を行い、何故間違えるのか?を、脳や心理学の知見からそのメカニズムを解明していこうといった内容です。
著者によると、人間には2つの脳(思考モード)があり、それぞれをシステム1、システム2と名付けています。
どちらのシステムも常時運用しているのですが、システム1は 早い思考(ファスト)といって 、こちらが意図せずとも勝手に動いて判断してしまうのです。
例えば「歯を磨く」「突然聞こえた音の方角を感知する」「おぞましい写真を見せられて顔をしかめる」といった、ヒューリスティック的な思考(これまでの経験や知識をもとに直感的に判断する)を元に行動するのです。
深く考えたりしないので、脳に負担を与えない(それほど疲れない)変わりにバイアスが生じやすいといった欠点があります。
一方システム2は遅い思考(スロー)であり、複雑な事を考えたりシステム1で困難が生じた場合などに問題解決に当たります。
いわゆる合理的・論理的思考といわれるものです。
理性的な判断に導いてくれるのですが、疲れやすく、ほどほどにしないとエネルギー切れでエラーを起こしてしまうのです。
人はこれらのシステムを無意識で、状況に応じて切り替えながら生活しているのです。

システム1とシステム2を理解するのにとても分かりやすい錯視「ミュラー・リヤー」があります。

上下の線の長さは同じだと分かっていても、上の線の方が長いように見えてしまいますよね。
これはまずシステム1が無意識でそう判断してしまうためであり、それは人がコントロールできるものではないということなのです。

UIを考える

我が家の照明スイッチの話に戻ります。
部屋の照明を点ける時ってどんな時でしょうか。
私の場合は、誰かと話しながら、夕飯の献立を考えながらなど、何かしながら照明を点けることがほとんどです。
つまり無意識で行動しているので、システム1で意思決定及び行動してるということになります。
私の脳は、右側の部屋の照明を点けるのだから、当然同じ方角にスイッチがあると思い込んで
(バイアスがかかった状態で)行動しているというわけだったのですね。
未だ押し間違えてしまうのは、そういった認知の特性が原因のひとつにあるからということなのです。
そしてこの認知の特性は、UXやUIを考える上でとても大切な観点です。
システム2ばかりを動かしてしまうと、疲れがたまって注意力が散漫となり、ミスに繋がったりストレスを感じることになります。
だからこそUIは人にとって負担を与えない、心地よいデザインにしていく必要があるのです。

さいごに

以上のことを踏まえた上で、我が家の照明スイッチをデザインしてみました。
例えば下図【After】は上下のスイッチを入れ替えただけなのですが、それだけでも押し間違える確率がぐんと下がると思いませんか?

【Before】

【After】

このようにほんのちょっと配置を変えるだけで、いけてるUIに早変わりできるのです。
むしろなぜ現状のような「考えさせるUI」にしてしまったのか?といった新たな疑問に若干悶々としつつ、もし引っ越すことがあればシステム1だけで快適に暮らせるようなUIの家を探そうと心に誓ったのでした。

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