平素は格別のご愛顧を頂き、ありがとうございます。
金融ソリューション事業部の「りーだー」です。

3D円グラフ撲滅委員会[1]の一員として、日夜、3D円グラフをこの世界から撲滅するために活動を続けております。

今回は、なぜ3D円グラフを使ってはいけないのか、そして、グラフとして円グラフは見やすいグラフなのかについて書かせていただきます。
また、3D円グラフと円グラフに関する記事やコメントが書かれたウェブサイトをご紹介いたします。

◆なぜ 3D円グラフを使ってはいけないのか

3D円グラフは、円グラフを傾けて表示するグラフで、エクセルなどの表計算ソフトで簡単に作成することができます。
2次元の円グラフと見比べると、立体的な 3D円グラフはちょっとかっこ良く見えるかもしれません。
なぜ3D円グラフを使ってはいけないのでしょうか。

次の3D円グラフを見てください。

3D円グラフは、その傾き具合によって、手前と奥側、そして横側に置かれている領域の見え方が異なって見えてしまいます。

奥側の10代の領域と、手前の40代の領域を見比べて見てください。
どちらが割合として大きいように見えるでしょうか?
ぱっと見ると、手前の40代の領域のほうが大きく見えるのではないでしょうか。

では、それぞれ、どのくらいの割合なのかを答え合わせをしてみましょう。

いかがでしょうか?

奥側の10代は13%、手前の40代は9%という結果でした。

3D円グラフは、配置の仕方や傾き方によって、見え方が異なってしまいます。
割合が実際には小さくても大きく見えたり、またその逆もあります。

さらに、別の3D円グラフを見てみましょう。
全ての要素が同じ割合ですが、表示されている位置によって、大きさが異なるように見えないでしょうか。

3D円グラフは、見ている方に誤解を与えてしまいます。
そのため、3D円グラフは使うべきではありません。

◆強調するためなら 3D円グラフを使ってよいのか

3D円グラフは、要素を手前に持ってくることで、要素を強調させ、実際より大きく見せることができます。

自分が強調したい要素を手前側に持ってくることで、相手により一層大きく見せて提示することはよいのでしょうか?

3D円グラフが誤解を与えるグラフであることを知っている人は、グラフを作った人に対して、もしかしたらこのように思うかもしれません。
「この人は私(私達)を騙そうとしている」
「差は些細なものなのに、大きな差があるように騙そうとしている」
「3D円グラフがどういうグラフか知らないのだろうか」

グラフは、見た人に、データがどのような集まりなのかを簡単に分かりやすく示すためのものです。
そのグラフで、本来のデータと異なるように見える、誤解を与えるグラフを提示することは、相手を騙すことにほかなりません。

もし、それでも 3D円グラフを使う場合は、どんなに良いデータであったとしても、それだけで相手がプレゼンや資料に対しての評価を下げることに繋がることを理解する必要があるでしょう。

◆そもそも円グラフは見やすいグラフなのか

人は角度の大小を比較するよりも、線の長さを比較する方が得意です。

円グラフよりも棒グラフの方がどの要素が一番大きいのか、小さいのかが一目でわかります。

要素が多いとき、円グラフは向いていません。
1%などの割合が小さい要素が多いと、要素名が一箇所に固まって区別しづらくなります。
また、要素の数が多いと、要素の数だけ要素の背景色と背景パターンを考えなければなりません。
背景色と背景パターンが多いほど、要素の区別が難しくなりますし、背景パターンによっては角度が実際より大きく見えたり小さく見えたりするかもしれません。

また、時系列データも円グラフは不向きです。
円グラフだと変化が一目で分かりづらいためです。

 

時系列で比較をしたい場合は、円グラフではなく、別のグラフを用いた方が良いでしょう。

もし、円グラフを使用する時、要素の名称は、円グラフの外に書くべきではありません。
円グラフは、それぞれの要素を背景色と境界線で区別しています。

どの要素がどの位置にあるかを、円グラフの外の凡例と円グラフの背景色を見比べなければならないので、一目で判断することができません。

その他のグラフでも言えることですが、色の組合せによっては、要素の区別が難しくなります。
背景色と背景パターンは区別しやすい組合せを選ぶ必要があります。

データの順序も重要です。
データを降順でソートしておくと、順番でどちらが大きい要素か分かりやすくなります。
また、最も割合の大きい要素は中心から真上を0度として時計回りに配置するのが望ましいです。
もし、中心から真上を基準にせず、真右や斜めなどから始めた場合、ソートされていないグラフと同じ程度のわかりやすさになるでしょう。

◆ドーナツ円グラフと要素が飛び出した円グラフ

通常の円グラフ以外の円グラフも見てみましょう。

ドーナツ型の円グラフはどうでしょうか。
ドーナツ型は、中心がくり抜かれて、ドーナツの形になった円グラフです。

角度が分かりにくくなるため、普通の円グラフと比べて、比較が難しくなります。
円周や体積で判断しなければなりません。
数値を載せていなければ、大小比較は困難を極めます。

要素が飛び出ている円グラフを見てみましょう。
強調したい要素をずらして表示するため、角度の比較が難しくなります。
比較するには、傾きと位置を変える必要があり、

このグラフを見た方が分かるのは、データの大小のわかりやすさではなく、あなたがどの要素を強調しようとしているのかです。

◆統計解析ソフト R における円グラフの記述

統計解析ソフト R において、以下のコマンドを実行すると、円グラフの紹介ページに飛ぶことができます。

?pie

ページには以下のような記載があります。

Pie charts are a very bad way of displaying information. The eye is good at judging linear measures and bad at judging relative areas. A bar chart or dot chart is a preferable way of displaying this type of data.
Cleveland (1985), page 264: “Data that can be shown by pie charts always can be shown by a dot chart. This means that judgements of position along a common scale can be made instead of the less accurate angle judgements.” This statement is based on the empirical investigations of Cleveland and McGill as well as investigations by perceptual psychologists.

(拙訳)
円グラフは、情報を提示する上でとても悪い方法です。
人の目は長さを判別するのは得意ですが、相対的な面積を判別するのは苦手です。
この種類のデータは、棒グラフやドットプロットが有効です。

参考文献の Cleveland (1985)、264 ページには、以下のように書かれています。
「円グラフで表現できるようなデータは、常にドットプロットで表せます。これは、人が苦手な角度の正確な判別の代わりに、人が得意とする共通の尺度で位置の判別ができるということです。」
この立場は、Cleveland の実証的研究および、McGill の知覚心理学者としての調査に基づいています。

Becker, R. A., Chambers, J. M. and Wilks, A. R. (1988) The New S Language. Wadsworth & Brooks/Cole.
Cleveland, W. S. (1985) The Elements of Graphing Data. Wadsworth: Monterey, CA, USA.

◆Wikipedia における円グラフの説明 (2015/12/18時点)

円グラフはおそらく最も一般的な統計図表としてビジネスやマスメディアで使われているが、科学や工学の分野ではあまり使われない。
円グラフには批判も多く、統計学者は円グラフを使用しないことを推奨していることが多い。
問題とされているのは、円グラフ内の異なる領域の比較や、複数の円グラフの比較が難しい点である。
円グラフは情報提示の方法として効果的な場合もあり、特に(扇形同士の比較ではなく)円グラフ内の扇形と円全体を比較する場合は有効である。
円グラフは扇形が全体の25%や50%となる場合に最も理解しやすいが、棒グラフなどの他の図や表形式の方が情報提示方法としては適切である。

◆円グラフに対する記事は他にもあります

3D円グラフを使うのはやめよう | Okumura’s Blog

TeX では定番の書籍「LaTeX2e 美文書作成入門」を書かれた 三重大学教育学部教授 奥村晴彦さんのブログより

Rのヘルプの「pie」の項目にも次のようにあるように,そもそも円グラフが良くない。
3D円グラフは,円グラフよりさらにさらにさらに悪い。

なぜ円グラフを安易に使ってはいけないのか?実際にグラフを使って理由を説明します | 時機到来

円グラフの有効な使い道は、今では非常に限定的になっています。
むしろ、いっそのこと円グラフを使わない方が、見る人の理解は捗るでしょう。
作るのが簡単なので、つい円グラフにしてしまいがちかもしれませんが、そういう時は作る前に一度深呼吸して、他のグラフ形式が最適ではないか考えてみてください。
グラフを作る目的は、人に正しくデータを理解してもらうためのものなのですから。

3D円グラフとともに滅するべき棒グラフの省略表現 | 廿TT

「3D円グラフ」→「ダメ」という専門家から見たら当たり前の指摘も、一歩外に出ればぜんぜん当たり前の認識ではないのです。

99%の人がやらかす「ダメ資料」ランキング | 東洋経済ONLINE

円グラフはある時点でのスナップショット(一時的なイメージ)として使う分にはよいのですが、時系列での比較には向いていません。
このケースであれば、右のグラフように積み上げの棒グラフにすれば、棒の長さという点でも、比較しやすくなります。

絶対に描いてはいけないグラフ入りスライド24枚 | SlideShare

データサイエンティスト協会が提示したスキルレベルによると、今回のようなグラフを描くと、グラフ・チャートの使い方が不適切なので、「Data Scientist 以前の方」に該当するそうです。

統計屋による新社会人のための統計系入門書お薦め一覧 | あんちべ!

3D円グラフ皆殺しマン で有名なあんちべさんのブログより

良き統計屋とは3D円グラフを使ってるプレゼンターをその場で
殴りに行く人のことです。
質疑応答の際、司会者からマイクを奪ってあらん限りの数学力で殴りましょう。

この方の功績により、3D円グラフをgoogleで検索すると、次の画像のようなキーワードが出てくるようになりました。

Excel charts: pie charts | Excel Charts Blog (英語)

Humans are unable to compare angles and that’s the main scientific reason why you should not use pie charts

(拙訳) 人は角度の比較ができない、それがあなたが円グラフを使用してはならない主な科学的理由です。

The Worst Chart In The World (英語)

The pie chart is easily the worst way to convey information ever developed in the history of data visualization.

(拙訳) 円グラフは、これまで発展してきたデータビジュアライゼーションの歴史の中で、情報を伝達する方法として最悪の方法です。

◆3D円グラフ、ダメ絶対

本記事により、3D円グラフを使用される方が一人でも少なくなれば幸いです。
今後も、3D円グラフ撲滅委員会[1] の一員として、3D円グラフがこの世界から無くなるその日まで、活動を続けていきます。

[1] 本団体は現在のところ架空の団体です。実在の人物、団体などとは関係ありません。