みなさんこんにちは。 サーバー大好きイカ娘さんことプラットフォームソリューション事業部の小川です。

 

もう7月も終盤ですが、雨の日が多くて気分までじめじめしてきますね。

今日は「格安サーバーで仮想化基盤を作ってみる ― 紹介編」と題して、普段私が自宅でおもちゃにしてあそんでいるサーバーの一部を紹介をしたいと思います。

格安サーバーとは?

その名の通り、安いサーバーマシンのことです。安い分性能は低いけど、元々企業が使うサーバーマシンとして作られているので作りは堅牢でしっかりしており、部品交換も簡単にできるものが多いです。

サーバーとはいってもデータセンターのラックに取り付けるような本格的なものではなく、ちょっとカッコつけたオフィス向けのパソコンって感じですね。

このジャンルの製品ですが、8~10年くらい前(初代Core iシリーズ~Sandy Bridgeが登場したころ)にちょっとしたブームになりました。「鼻毛鯖」なんて単語に聞き覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。

電源とマザーボードのついた本体を安く仕入れて、CPU/メモリ/ストレージ/グラボなど主要な部品を自分の予算と用途に合わせて交換し、コストパフォーマンスの高いコンピューターに仕立て上げようというものですね。

今回の主役

今は格安サーバーの市場もだいぶ下火になってしまい、選択肢も減ってしまったのですが、2017年に富士通からちょっと面白い製品が発売されました。それがこちら。

富士通の「PRIMERGY TX1310 M3」というサーバーパソコンです。

正面から見ると、黒い筐体の右側に赤いラインが入っているのがアクセント。 なかなかかっこよくないですか!?

背面はこんな感じ。本体のI/Oはディスプレイポート一つと、USB3.0がいくつかとLANが一つあるだけで、ほかは何もありません。

なお、本来はPCI Expressスロットには何も刺さっていませんが、私のマシンはジャンク箱に入っていたグラフィックボードやLANボード、USBカードなどを取り付けています。

本体を側面からみるとこんな感じです。サイドパネルは本体側面のハンドルを引っ張るだけで簡単に外れます。ドライバーを使わなくても本体内部にアクセスできるのがとても良いです。

このマシン、なんと奥行きが30cmしかありません。Micro ATX相当の拡張性を持つマシンとしては、とてもコンパクトにまとまっています。

内部はこんな感じです。コンパクトにギュッと凝縮されていますが、メンテナンス性はとても高いです。

繰り返しになりますが、私のマシンはジャンク箱に入っていたグラフィックボードやLANボード、USBカードなどを取り付けています。本来はPCI Expressスロットには何もついていません。

電源ユニットは250Wのものですが、残念ながら独自仕様なので交換できません。 とはいえ、補助電源の必要ないグラフィックボードであれば載せても容量不足にはならないと思います。

フロントパネルのふたを開けると、こんなふうにHDDも簡単に装着できます。(ホットプラグは非対応ですが)

立派な筐体のサーバーですが…お値段、なんと新品で13,000円!(注:私が購入した2019/02頃の価格です。セール中でした。今は少し値上がりしているようです)

さて、気になるのはその性能ですが…

CPU Intel Celeron G3930 (2コア/2スレッド 2.9GHz)
メモリ 4GB (DDR4-2400 Unbuffered 最大64GB)
チップセット Intel C236
HDD なし(内部に3.5″ベイが4つあり)
グラフィック CPUオンボード(出力端子はDPx1のみ)
LAN 1000BASE-T x1 (Intel i218-LM)

こんな感じです。 OSはおろか、HDDすらついてません!その潔さがまた良いっ!

値段が値段なので、CPUは最低グレード、メモリも必要最小限といったところですが、そこは交換/増設すればよいのです。

CPUは第7世代のCore iシリーズ(Kaby Lake)が搭載できます。Kaby Lakeが載るマザーボードがついた電源付きのケースが13,000円と考えると、どうです?いいおもちゃだと思いませんか?

仮想化基盤として使うために、部品を強化する。

CPUが2コア、メモリが4GBの最小構成でもVMWare ESXiなどの仮想化基盤を動かすことはできますが、仮想マシンを快適に動かせるとは言えません。

自作PCとほぼ同じ感覚で簡単に部品を交換できるので、CPUとメモリを交換して強化してしまいましょう!

1.CPUを交換

まずCPUですが、TX1310 M3が公式に動作を保証している(製品のラインナップに載っている)CPUは下記のものになります。

Celeron G3930  (2コア/2スレッド 2.9GHz)
Pentium G4560 (2コア/4スレッド 3.5GHz)
i3-7100T (2コア/4スレッド 3.9GHz)
Xeon E3-1205v6 (4コア/4スレッド 3GHz)
Xeon E3-1225v6 (4コア/4スレッド 3.3GHz)
Xeon E3-1245v6 (4コア/4スレッド 3.7GHz)

上記以外のCPUでも「使える可能性があります」が、保証はありません。 また交換は自己責任となります(製品保証もなくなります)。そこはおもちゃなので割り切りましょう。

2019/07時点では、最新の製品は第9世代Core iシリーズなので、Kaby Lakeは2世代型落ちになりますね。ということは、CPUは値段が手ごろになってきた中古品が狙い目になります。

仮想化基盤として使うのであれば4コア/8スレッドのCore i7が理想ですが、物理コアが4コアあればよいのでハイパースレッドのないCore i5でも十分だと思います。

私は中古の「i5-7500 (4コア/4スレッド 3.4GHz)」をオークションで購入しました。 18,000円くらいだったと思います。上記のCPUリストには載っていませんが、問題なく利用できました。

2.メモリを増設

次にメモリですが、メモリは普通のDDR4のECCなしメモリが利用できます。 仮想化基盤のホストではCPUよりもメモリ容量のほうが重要なので、載せられるだけ載せたいところです。

1枚あたり16GBのモジュールを4枚使って、最大容量の64GBまで載せるのもよいですが、評価用に使うのであれば16GBまたは32GB程度でも十分に遊べると思います。

2019/07時点の相場では、メモリは16GBあたり8000円程度で購入できるので、まずは32GB程度まで増やしておくと良いと思います。

3.ストレージを搭載

ストレージ(HDDまたはSSD)は何も搭載されていないので、何かしらを載せてあげる必要があります。内部には3.5インチベイしかないので、2.5インチのSSDは変換基盤を使って搭載します。余っているSSDでも載せておきましょう。

仮想化基盤(ハイパーバイザ)をインストールする

さて、CPU/メモリ/ストレージを強化して評価用のハードウェアは出来上がりましたが、肝心のOSがインストールされていません。

個人が無料で使用できる仮想化環境には、以下のようなものがあります。

ベンダー 製品名 特徴
VMWare VMWare ESXi 6.7 多くの企業で採用されている、仮想化基盤の定番中の定番。

ハイパーバイザにあたる「ESXi」は無料で使用可能。

Microsoft Hyper-V Server 2019 Windows Server 2019からHyper-Vの機能だけ抜き出したもの。
RedHat KVM Linuxカーネルに組み込まれたオープンソースのハイパーバイザ。

初めて仮想化基盤に触れるのではあれば「VMWare ESXi」がおすすめです。Linuxの勉強も兼ねて、KVMベースの仮想化基盤を作ってみるのもよいでしょう。

早速インストール…といきたいところですが、長くなってしまったので仮想化環境のインストール編はまた後日書きたいと思います。

さいごに

仮想マシンのインスタンスを立てて遊ぶだけなら、AWSなどのクラウドを活用すれば簡単にできます。

しかし、クラウド技術の要となる仮想化基盤、それを支えるサーバーから手作りすると、クラウドへの理解もさらに深まるのではと思います。

皆さんもおもちゃのサーバーを買って、いじり倒して遊びましょう!!