こんにちは!UXデザインセンターの平島です。

 

少し前になりますが、7/29(月)にHCD-net主催のセミナー 「理解のデザイン ~情報アーキテクチャ設計入門~」を受講してきましたので、内容と感想をまとめてみます。 講師はHCD-netの副理事長も務めていらっしゃる(株)コンセント代表の長谷川 敦士さんです。

セミナー内容

なぜ情報が伝わらないのか?

イントロダクションでは、「分かりにくいデザイン」が生まれてしまう例として 駅の券売機やリモコン、Webサイトなど、様々な事例が紹介され、情報が受け手に伝わらない理由として次の5つの要素が挙げられました。

情報が伝わらない理由

  • 情報過多
  • 一貫性の欠如
  • 文脈のずれ(受け手の視点とのずれ)
  • 優先度の欠如
  • 情報自体の難しさ

インストラクションからヒントを得る

次に、理解を促すデザインの概念として リチャード・ソウル・ワーマン氏が『理解の秘密―マジカル・インストラクション』の中で提唱している 「インストラクショナル・デザイン」についてご説明いただきました。 Instruction は直訳すると「命令」「指示」などとなりますが、 建築の設計図や音楽における楽譜などもインストラクションであるとのことでした。 業務アプリケーション設計の場合なら、画面仕様書や機能仕様書などがこれに相当するのかなと思います。

インストラクションの構成要素

  • 提供する人と受け取る人
  • コンテキスト(文脈)の海
  • コンテンツとチャネル(内容と伝える手段)

インストラクションの要因

  • 使命:何のためか
  • 最終目的:最終結果として選んだ地点
  • 手順:指示内容
  • 時間:実行に必要な予定時間
  • 予測:どんなことが起こりそうか
  • 失敗:ミスした場合、通り過ぎた場合

このインストラクションを使って、ユーザーとコンテンツをどう繋ぐのか、 「理解をデザインする人」としてのインフォメーション・アーキテクト (IA) という職業が考案されたそうです。 (ちなみにオライリーから出ている『情報アーキテクチャ』:通称シロクマ本に書かれている IA は ワーマン的解釈の IA に比べると”Webサイト”の構造設計などに特化した狭義のIAと言えるようです。)

理解のデザインのアプローチ

後半では情報アーキテクチャの基礎知識として、 情報生態系の要素(ユーザー/コンテンツ/コンテキスト)、 オンラインメディア上や企業サイトにおける情報アーキテクチャとその要素、 情報分類のトップダウン/ボトムアップ、コンテンツモデルとページデザイン、 ペースレイヤリング(速度変化の層)の考え方などについて説明されました。

最後にケーススタディとして、 地域医療に関する法人のWebサイトとアルバイト求人サイトの改善事例をご紹介いただきました。 求人サイトの事例では、基本的なスペックを載せるだけでなく、 「ユーザー観点のタグ」(茶髪OK、まかないあり、など)で検索できるようにした結果、 コンバージョンが何と3倍になったそうです!すごいですね。

感想

情報アーキテクチャに特化したセミナーを受講するのは初めてでしたが、 なぜ伝わらないのか?インフォメーション・アーキテクトとは?というところから始まり、 知識や具体的な手法まで、非常に密度の濃い2時間でした…!
初めて聞く内容についてはまだ自分の中で完全に咀嚼しきれていない部分もありますが、 「UXを考えるのと一緒に情報のマッピングも考えなければならない、 特にアプリやIoT関連んでは特定の画面遷移の中だけにハマってしまい、 ひとつのユースケースしか満たしていない…というようなことが起こりうる」というお話は 現在担当しているプロジェクトと絡めてイメージしやすく、印象に残りました。 これはUXデザイン全般についても言えるのですが、 情報アーキテクチャをきちんと設計するには、 ユーザー・コンテンツ・コンテキストへの深い理解が不可欠であり、 様々な視点から根気よく、ユーザーへの思いやりを持って取り組んでいかなければならないのだなと思いました。

【その他印象に残ったキーワードなどのメモ】

  • 使えるか < 伝わるか(まず伝わらないと、使うためのスタートラインにも立てない)
  • 正確さ⇔分かりやすさ(相反するところにあったりする)
  • エドワード・T・ホール『文化を超えて』
  • オントロジー(意味の定義)/タクソノミー・トポロジー(分類・区分け)/コレオグラフィ(振る舞いのデザイン)
  • 行動経済学の「デフォルト効果」
  • フィルターバブル問題とデザインの社会的責任

おまけ

最後に、情報の受け手の視点について体験してもらうために 当日セミナーの中で紹介された動画があるのですが、それと似たものを載せておきます。 (有名な動画なので見たことがある方も多いと思います。)

白チームがボールをパスする回数が何回か、注意して数えてみてください。

いかがでしたでしょうか?

ここでは「パスの数は何本?」と質問することでユーザーにスキーマ(何を見ようとしているか)を与えていますが、 これは「ユーザーの当初の期待」と置き換えることができます。 どんなに情報を与えたつもりでも、受け手の視点・期待とずれていればと全く伝わらないということが良く分かります。

自分の担当している製品・サービスがこの動画におけるゴリラになっていないか、 ユーザーの視点に合わせてデザインされているか、注意していかなければと改めて思いました。