初めまして。西山 美恵子です。
突然ですが、皆さんは普段生成AIを利用していますか?
おそらくYesと答える方が大半だと思います。実際に生成AIを使うことで、自分だけだと出来なかった作業量が行えるようになっています。では、ジュニアエンジニアが生成AIを前提に開発していることに対してはどう感じているでしょうか?
昨今、生成AIが出てくる前と生成AIが出てきた後でジュニアエンジニアの育成方法が変わったと言われており、ジュニアエンジニアの育成をめぐって生成AIをどう使わせるか?もしくは、ジュニアエンジニアの生成AI利用を禁止するか?など様々な議論があります。
当記事では、クレスコのとある部署に配属された一部の新人向けに、研修としてAI駆動開発を実践し、それらの結果や今後の課題についてまとめました。
目次
1.AIdolプロジェクトとは
2.研修で実施したこと
3.AI駆動開発で見えてきた育成効果
4.新人が抱えやすい課題
5.今後の強化ポイント
6.まとめ
1.AIdolプロジェクトとは
AIdolプロジェクトは、生成AIを活用した「AI駆動開発」を実践的に学ぶための取り組みです。2025年度は、AIに成果物を作らせることを中心に活動していましたが、2026年度はそこから一歩進めて、AIと協力しながら成果物を作ることを重視しました。つまり、「使ってみる」段階から、「使いこなして成果を上げる」段階への移行を目指した活動です。
2.研修で実施したこと
今回の研修では、まずGitHub操作、HTML/CSS/JavaScript、React.js、SQLといった基礎的な技術スキルの研修を実施しました。
AWSクラウドを利用したSPA構築、アジャイル開発、デザイン思考などの基礎学習を行いました。その後、デザイン思考ワークショップで出たアイディアの中から3つを選定し、実際に動くアプリケーションとして実現する実践開発に取り組みました。開発では生成AIの活用を前提とし、参加者はAIに質問しながらコードを作成したり、エラーの原因を調べたり、実装方針を整理したりしました。
実施した研修スケジュールの詳細は以下の表1. 研修スケジュールに示す通りです。
表1. 研修スケジュール
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日付 |
内容 |
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6/16 |
ローカル環境構築&Gitの基本操作 |
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6/17 |
Gitの基本操作&自己紹介ページの作成 |
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6/18 |
Reactチュートリアル Part1 |
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6/19 |
Reactチュートリアル Part2 |
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6/22 |
Reactチュートリアル&自己紹介ページのエンハンス |
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6/23 |
データベース概要&操作ハンズオン |
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6/24 |
AWSクラウドを使ったアプリケーション開発 Part1 |
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6/25 |
AWSクラウドを使ったアプリケーション開発 Part2 |
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6/26 |
AWS Summitに参加 |
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6/29 |
AWSクラウドを使ったアプリケーション開発 Part3 |
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6/30 |
テスト基礎・実践 |
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7/1 |
アジャイル体験型ワークショップ |
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7/2 |
デザイン思考ワークショップ Part1 |
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7/3 |
デザイン思考ワークショップ Part2 |
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7/6-9 |
アジャイル開発 Sprint0(開発準備) |
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7/13-17 |
アジャイル開発 Sprint1 |
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7/21-24 |
アジャイル開発 Sprint2 |
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7/27-31 |
アジャイル開発 Sprint3 |
3.AI駆動開発で見えてきた育成効果
参加者17名を対象に、AI活用スキル、技術スキル、業務遂行スキル、ソフトスキルの4観点・37項目の評価軸を用意し5段階評価で参加者に継続的に自己評価してもらいました。5段階評価の評価基準は以下の表2に記載した通りです。
表2. 評価基準
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レベル |
区分 |
判定基準 |
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1 |
未習得 |
知識・経験がほぼない。説明を聞いても理解が難しい。 |
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2 |
理解 |
概念や用語を理解している。見本を見れば内容を説明できる。 |
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3 |
指導下で実施 |
指導・サポートを受けながら作業を遂行できる。 |
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4 |
独力で実施 |
標準的な業務を独力で完遂できる。判断に迷うことが少ない。 |
結果は、参加者が参加した期間別の成長幅のそれぞれの平均が表3. 期間別成長幅示す通りです。特にアジャイル開発のSprintを経験した参加者の成長幅が、6/16-7/17までの参加者3名と、6/16-7/31の最後までの参加者6名で共に+1.41ポイントの伸び幅がありました。なお、1週間当たりの成長幅は+0.154ポイントでした。
表5.カテゴリ別成長幅に示した通り、AI活用、技術、業務遂行、ソフトスキルの4カテゴリの中で最も伸びたのは、最終週のソフトスキル+3.00ポイントでした。これは、参加者同士分からない部分を教え合ったり、対話を繰り返しながら進めたこと、対話をするためのベースにある心理的安全性が高い状態だったこと、このソフトスキルの成長につながったと考えられます。
一方で、最終週の技術スキルの成長幅は+2.35にとどまり、参加者の振り返りコメントにも「AIが作成したコードを十分に理解しないまま次に進んでしまった」や「AIが生成するコードで分からない箇所があり、曖昧になってしまっている点がある」などAIが生成するコードや設計提案などの内容を十分に理解していない趣旨の内容がしばしばありました。
こうしたことから、AIの生成結果を鵜呑みにしないための、設計・プログラミング・テスト・レビューといった基礎的な開発力を継続して強化する必要があることも分かりました。
表3. 期間別成長幅
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参加期間 (日数) |
参加人数 |
平均成長幅 |
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6/16-6/30 (15日) |
3名 |
+0.40ポイント |
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6/16-7/3 (18日) |
5名 |
+0.24ポイント |
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6/16-7/17 (32日) |
3名 |
+1.41ポイント |
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6/16-7/31 (46日) |
6名 |
+1.41ポイント |
表4. 1週間当たりの成長幅
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参加人数 |
1週間あたりの平均成長幅 |
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17名 |
+0.154ポイント |
表5. カテゴリ別成長幅
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カテゴリ |
初週の平均成長幅 |
最終週の平均成長幅 |
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AI活用 |
+1.35ポイント |
+2.85ポイント |
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技術 |
+1.35ポイント |
+2.35ポイント |
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業務遂行 |
+1.77ポイント |
+2.55ポイント |
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ソフトスキル |
+2.33ポイント |
+3.00ポイント |
4.新人が抱えやすい課題
今回の活動を通じて、生成AIを活用するからこそ見えてくる課題もありました。代表的なのは、前章でも少し触れましたが、AIが生成したコードを理解しないまま利用してしまうことです。動くコードがすぐに得られる一方で、「なぜ動くのか」を説明できないまま次の実装へ進んでしまうケースがありました。また、ReactやAWSなどの仕組み理解が浅い状態では、フロントエンドとバックエンドのつながりを把握しにくく、エラー発生時の切り分けも難しくなります。さらに、自分で考える前にAIへ質問してしまう、AIの回答を鵜呑みにしてしまう、AI出力の正しさを判断できないといった依存傾向も課題として見えてきました。生成AIを禁止するのではなく、AIを学習支援・実装支援の道具として正しく使う力を育てることが重要だと感じています。
5.今後の強化ポイント
今後は、AIを使って成果物を作る段階から、AIを使いながら技術を理解し、自分の言葉で説明・実装できる段階へ進めることが重要です。そのために、OJTの中で設計、単体テスト、コードレビューをセットにした小規模開発を継続的に実施することが有効だと考えています。また、プロンプトの書き方、AI出力の検証観点、情報管理ルールなどをチェックリスト化し、誰が実施しても一定の品質を担保できる状態にしていく必要があります。アジャイル開発のふりかえりの中にAI活用の観点を組み込み、チームとしてAIとの付き合い方を学び続ける運用も大切です。
6.まとめ
今回のAIdol活動を通じて、生成AIを活用した開発は、新人にとって大きな学習機会になることが分かりました。AIを使うことで、短期間でも実際に動くアプリケーションを形にでき、プロンプト設計やAI支援デバッグなどのスキルも伸ばすことができます。一方で、AIが出した答えを理解し、検証し、自分の言葉で説明する力がなければ、実務で安定して成果を出すことは難しいと感じました。これからの新人育成では、生成AIを単に便利な道具として使うだけでなく、技術理解を深めるためのパートナーとして活用する視点がますます重要になるのではないでしょうか。


