こんにちは。デジタルイノベーション推進室の戦闘員Oです。
前回「AWS KiroでJavaアプリを作ってみた」では、Kiroの基本的な使い方やインストール方法をご紹介しました。
AWS KiroでJavaアプリを作ってみた | Tech Blog | CRESCO Tech Blog
今回は、Kiroをさらに賢く使うための「ステアリングファイル」という機能について、実際にブログ投稿用のルールを作りながら解説していきます。
この記事を読むことで、Kiroと対話しながらプロジェクト固有のルールを作成し、チーム全体で品質を統一する方法が理解できます。
アジェンダ
1. 今回のゴール:ブログ投稿用ステアリングファイルの作成
2. ステアリングファイルの基本
3. Kiroと対話しながらステアリングファイルを作る
4. 実際に作成したステアリングファイルの解説
5. ステアリングファイルを使ってみる
6. 他の活用例
7. まとめ
1. 今回のゴール:ブログ投稿用ステアリングファイルの作成
今回は、実際にこのブログ記事を書くために使用している「ブログ投稿用ステアリングファイル」を作成します。
達成したいこと:
• 文体を統一する(「です・ます」調、親しみやすい表現)
• 構成を標準化する(番号付きセクション、表形式での整理)
• 品質チェックを自動化する(チェックリストでのレビュー)
• チームメンバーが同じ品質で記事を書けるようにする
ステアリングファイルとは?
ステアリングファイルは、Kiroの振る舞いをカスタマイズする設定ファイルです。
プロジェクト固有のルールやガイドラインを記述することで、Kiroが常にそのルールに沿った提案をしてくれるようになります。
なぜステアリングファイルが必要なのか?
Kiroを使っていると、毎回同じような指示を繰り返すことがあります。
例えば:
• 「この記事を親しみやすい文体で書いてください」
• 「設定項目は表形式で整理してください」
• 「セキュリティ注意事項を含めてください」
ステアリングファイルを使えば、これらの指示を一度設定するだけで、以降は自動的に適用されます。
チーム全体で共有すれば、誰が書いても同じ品質の記事が作成できるようになります。

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- 図:ステアリングファイルのイメージ図
2. ステアリングファイルの基本
2-1. 配置場所とファイル形式
ステアリングファイルは、プロジェクトのルートディレクトリに以下の構造で配置します:
プロジェクトルート/ └── .kiro/ └── steering/ ├── blog-writing-guide.md ├── coding-standards.md └── … |
ファイル形式はMarkdownで、front-matter(ファイル先頭のメタデータ)で動作を制御します。
2-2. 3つの適用方法
ステアリングファイルには、3つの適用方法があります。用途に応じて使い分けることができます。
| 適用方法 | 設定値 | 説明 |
使用 |
| 常に適用 | `inclusion: always` | すべての会話で自動的に適用される | プロジェクト全体のルール、文体統一 |
| 条件付き適用 | `inclusion: fileMatch` `fileMatchPattern:'*.java'` |
特定のファイルを読み込んだときだけ適用 | Java専用のコーディング規約 |
| 手動適用 | `inclusion: manual` | ユーザーが明示的に指定したときだけ適用 | 特定のタスク専用ルール |
2-3. 基本的な書き方
最もシンプルなステアリングファイルの例:
[markdown] --- inclusion: always --- # プロジェクトのルール ## コーディング規約 - クラス名はPascalCaseで記述する - メソッド名はcamelCaseで記述する ## コメントルール - すべてのpublicメソッドにJavaDocを記述する |
front-matterでinclusion: alwaysを指定することで、このルールが常に適用されます。

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- 図:ステアリングファイルの基本構造
3. Kiroと対話しながらステアリングファイルを作る
ステアリングファイルの大きな特徴は、Kiroと対話しながら作成できることです。
完璧なルールを最初から考える必要はなく、会話を通じて自然にルールが整理されていきます。
3-1. 目的を伝える
まず、Kiroに何を作りたいのかを伝えます。
ユーザーの依頼:
ブログ投稿用のステアリングファイルを作りたいです。
目的は、クレスコ社のTech Blogへの投稿記事を作成することです。
Kiroは、この依頼を受けて必要な情報を質問してくれます。

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- 図:Kiroとの対話画面(目的を伝える)
3-2. 要件を具体化する
Kiroからの質問に答えることで、ルールが明確になっていきます。
具体的な要件の例:
• 投稿先:https://www.cresco.co.jp/blog/entry.html
• 文体:親しみやすく、初心者にも分かりやすい「です・ます」調
• 統一したいポイント:
- 挨拶から始める
- 番号付きセクション構成
- 設定項目は表形式で整理
- セキュリティ注意事項を含める
3-3. 過去の成果物を参考にする
過去の投稿URLをKiroに渡すと、実際の記事を読み込んで文体やスタイルを学習してくれます。
過去の投稿例:
• SonarQube ServerをAWSで構築
• Amazon Q DeveloperでJava内OracleSQLをPostgreSQLに変換
• AWS KiroでJavaアプリを作ってみた
Kiroは、これらの記事を分析して共通パターンを見つけ、ステアリングファイルに反映してくれます。

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- 図:Kiroが過去の記事を分析している様子
3-4. 効果的なステアリングファイルのポイント
対話を通じて作成する際のポイントをまとめます。
具体例を含める:
抽象的なルールだけでなく、実際の例を示すことで、Kiroが正確に理解できます。
[markdown] ❌ 悪い例: - 親しみやすい挨拶をする ✅ 良い例: - 挨拶から始める(例:「こんにちは。デジタルイノベーション推進室の戦闘員Oです。」) |
チェックリストを活用:
品質基準をチェックリスト形式で記載することで、レビュー時に活用できます。
段階的に改善:
完璧なルールを最初から作る必要はありません。使いながら改善していくことが重要です。
4. 実際に作成したステアリングファイルの解説
Kiroとの対話を通じて完成したステアリングファイル(.kiro/steering/blog-writing-guide.md)の内容を見ていきましょう。
4-1. 完全なステアリングファイル
以下が、実際に作成したステアリングファイルの全文です。
読者の皆さんも、このファイルをコピーして自分のプロジェクトで使うことができます。
ファイル名: .kiro/steering/blog-writing-guide.md
[markdown] --- inclusion: always --- # ブログ投稿ガイドライン ## 基本情報 - 目的: クレスコ社のTech Blogへの投稿記事作成 - 投稿先: https://www.cresco.co.jp/blog/entry.html - 言語: 日本語で全てのやりとりを行う ## 文体とトーン ### 基本スタイル - 親しみやすく、読みやすい文体を使用 - 技術的な内容でも、初心者にも理解できるよう丁寧に説明 - 「です・ます」調で統一 - 挨拶から始める(例:「こんにちは。デジタルイノベーション推進室の戦闘員Oです。」) ### 構成の特徴 - 明確な番号付きセクション構成(1. 2. 3...) - 各セクションに具体的なゴールや目的を明示 - 手順を細かく分解して説明 - スクリーンショットや図表を効果的に活用(テキストでは[画像]として表現) ## コンテンツの特徴 ### 技術記事の書き方 1. 導入部分 - 前回の記事との関連性を示す(シリーズ記事の場合) - 今回のゴールを明確に提示 - 想定する読者層や利用シーンを説明 2. 本文構成 - 設定項目は表形式で整理 - コマンドやコードは明確に区別して表示 - 重要な注意事項は別途強調 - 各ステップに「なぜそうするのか」の説明を加える 3. 技術用語の扱い - 専門用語には適切な説明を付ける - 英語の技術用語はカタカナ表記も併記 - 略語は初出時にフルスペルを示す ### 実践的な要素 - 実際の設定値の例を示す({任意の〇〇名}の形式) - ハードウェア要件や制約条件を明記 - トラブルシューティングのヒントを含める - セキュリティに関する注意事項を忘れずに記載 ## 記事の種類 ### チュートリアル形式 - ステップバイステップで進める - 各ステップの完了状態を確認できるようにする - 最終的な成果物を明示 ### ツール紹介・比較 - 実際の使用例を示す - 変換前後のコード比較など、具体例を豊富に - メリット・デメリットを客観的に説明 ### 環境構築ガイド - 必要な前提条件を明記 - 設定項目を表形式で整理 - コスト面の考慮事項も記載(AWS等の場合) ## 品質チェックポイント - [ ] 日本語の文法・表記が正しいか - [ ] 技術的な内容に誤りがないか - [ ] 手順が抜けなく記載されているか - [ ] 読者が実際に再現できる内容か - [ ] セキュリティ上の注意事項が含まれているか - [ ] 適切な引用・参照が含まれているか ## 過去の投稿例 参考となる過去の投稿: - SonarQube ServerをAWSで構築 - SonarQube IDEからServerに接続 - Amazon Q DeveloperでJava内OracleSQLをPostgreSQLに変換 - AWS KiroでJavaアプリを作ってみた これらの記事は、実践的なチュートリアル形式で、読者が実際に手を動かして学べる内容となっています。 |

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- 図:完成したステアリングファイルの全体像
4-2. 各セクションの役割
それでは、このステアリングファイルの各セクションがどのような役割を果たしているか、詳しく見ていきましょう。
基本情報セクション
[markdown] ## 基本情報 - 目的: クレスコ社のTech Blogへの投稿記事作成 - 投稿先: https://www.cresco.co.jp/blog/entry.html - 言語: 日本語で全てのやりとりを行う |
なぜこれを明記するのか:
• Kiroが記事の目的を常に意識できる
• 投稿先を知ることで、そのブログに適した内容を提案できる
• 言語を明示することで、日本語での丁寧な説明を心がける
文体とトーンセクション
ポイント:
• 具体例(「こんにちは。デジタルイノベーション推進室の戦闘員Oです。」)を示すことで、Kiroが同じスタイルを再現しやすくなる
• 「挨拶から始める」という明確な指示により、記事の冒頭が統一される
• 構成の特徴を明記することで、読みやすい記事構造が保たれる
コンテンツの特徴セクション
このセクションにより、Kiroは技術記事として必要な要素を漏らさず含めるようになります。
特に「なぜそうするのか」の説明を加えることで、読者の理解が深まります。
品質チェックポイントセクション
チェックリストの活用:
このチェックリストは、記事のレビュー時にKiroが自動的に確認してくれます。
後ほど、実際にこのチェックリストを使った自動レビューの方法をご紹介します。
過去の投稿例セクション
過去の投稿を参照する理由:
• Kiroが実際の記事スタイルを学習できる
• 一貫性のある文体を保てる
• 成功事例を参考にできる
このように、各セクションには明確な役割があり、それぞれがKiroの振る舞いに影響を与えています。
5. ステアリングファイルを使ってみる
実際にステアリングファイルの効果を検証してみましょう。
同じ内容について、ステアリングファイル適用前と適用後で記事を書いてもらい、違いを比較します。
5-1. 適用前/適用後の比較
テーマ: 「Kiroのステアリングファイルについて」という簡単な説明記事
ステアリングファイル適用前の記事
[markdown] # Kiroのステアリングファイルについて ステアリングファイルはKiroの動作をカスタマイズできる機能です。 ## 使い方 .kiro/steering/フォルダにMarkdownファイルを置くだけです。 ## 設定方法 front-matterで設定します。 - always: 常に適用 - fileMatch: 特定ファイルで適用 - manual: 手動で適用 ## 例 --- inclusion: always --- ルール • コーディング規約を守る ## メリット - チームで共有できる - 毎回同じ指示をしなくて済む - 品質が安定する 以上です。 |
問題点:
• 挨拶がない
• 箇条書きのみで説明が簡潔すぎる
• 表形式での整理がない
• 「なぜそうするのか」の説明がない
• 読者が実際に試せる具体例が少ない
ステアリングファイル適用後の記事
(この記事自体がステアリングファイル適用後の例です!)
改善された点:
• 「こんにちは。デジタルイノベーション推進室の戦闘員Oです。」という挨拶
• 明確な番号付きセクション構成
• 表形式での設定項目整理
• 各ステップに「なぜそうするのか」の説明
• 実際の対話例やコード例が豊富
• 読者が実際に試せる具体的な手順
5-2. 比較表でまとめる
| 項目 | ステアリングファイル適用前 | ステアリングファイル適用後 |
| 挨拶 | なし | 「こんにちは。〇〇です。」 |
| 構成 | 箇条書き中心 | 番号付きセクション |
| 説明の丁寧さ | 簡潔すぎる | 初心者向けに丁寧 |
| 表形式の活用 | なし | 設定項目を表で整理 |
| 具体例 | 最小限 | 豊富な実例と対話例 |
| 「なぜ」の説明 | なし | 各ステップに理由を記載 |
| チェック項目 | なし | 品質チェックポイントあり |
| 読みやすさ | △ | ◎ |

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- 図:適用前と適用後の比較
5-3. チェックリスト機能での記事レビュー自動化
ステアリングファイルに記載した品質チェックポイントを使って、実際の記事をKiroにレビューしてもらいましょう。
実例:前回の記事をレビュー
前回公開した「AWS KiroでJavaアプリを作ってみた」という記事を、今回作成したステアリングファイルを使ってレビューしてもらいました。
Kiroへのプロンプト:
https://www.cresco.co.jp/blog/entry/entry-1017487446041386307.html AWS KiroでJavaアプリを作ってみた この記事をレビューしてください |
Kiroは、ステアリングファイルに記載されたブログ投稿ガイドラインに基づいて、記事を詳細にレビューしてくれます。
レビュー結果の例:
• 良い点:明確な構成、スクリーンショット活用、実践的な内容
• 改善点:導入部分の充実、セクション構成の完成、技術的な説明の追加
• 具体的な修正提案:挨拶文の追加、まとめセクションの追加、など
このように、ステアリングファイルがあれば、既存の記事に対しても一貫した基準でレビューができます。

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- 図:Kiroによるレビュー結果の表示
レビューの活用方法:
• 記事を書き終えたら、Kiroにレビューを依頼
• ステアリングファイルのチェックリストに沿って自動確認
• 問題があれば具体的な修正提案を受ける
• 修正後、再度レビューして品質を確認
レビューのメリット:
• 記事の品質が安定する
• レビュー時間が大幅に短縮される
• 見落としがちなポイントも自動チェック
• 過去の記事も同じ基準で評価できる
これにより、チーム全体で一貫した品質の記事を作成できるようになります。
6. 他の活用例
ブログ投稿以外にも、ステアリングファイルはさまざまな場面で活用できます。
6-1. コーディング規約の統一
Java開発の例:
[markdown] --- inclusion: fileMatch fileMatchPattern: '*.java' --- # Javaコーディング規約 ## 命名規則 - クラス名:PascalCase - メソッド名:camelCase - 定数:UPPER_SNAKE_CASE ## コメントルール - すべてのpublicメソッドにJavaDocを記述 - 複雑なロジックには説明コメントを追加 |
適用場面:
• チーム開発でのコーディングスタイル統一
• 新メンバーへのオンボーディング
• レビュー時の指摘事項削減
6-2. プロジェクト固有の知識共有
API設計の例:
[markdown] --- inclusion: always --- # プロジェクトAPI設計ガイドライン ## エンドポイント命名規則 - RESTful設計に従う - 複数形を使用(/users、/products) - バージョニング:/api/v1/... ## エラーハンドリング - 適切なHTTPステータスコードを使用 - エラーレスポンスは統一フォーマット |
適用場面:
• プロジェクト固有のルール共有
• 設計思想の統一
• ドキュメント代わりの活用
6-3. ステアリングファイルの限界
ステアリングファイルは強力な機能ですが、万能ではありません。
できること:
• ✓ ガイドラインの提示
• ✓ コード生成時のルール適用
• ✓ 文体や構成の統一
• ✓ チーム知識の共有
できないこと:
• ✗ 既存コードの自動検証
• ✗ 外部ツールの実行
• ✗ 実際のテストやスキャン
• ✗ コードの自動修正
重要なポイント:
> ステアリングファイルは「ガイドライン」を提供するもの。
> 実際のコード検証や外部ツール連携には「Kiro Power」が必要です!
次回予告:
次回の記事では、「Kiro Power」を使って外部ツールと連携し、
実際のコード検証を自動化する方法をご紹介します。
ステアリングファイルとの違いを実感していただけると思います!
7. まとめ
今回は、Kiroのステアリングファイル機能について、実際にブログ投稿用のルールを作りながら解説しました。
ステアリングファイルで実現できたこと:
• Kiroと対話しながら、自然にルールを作成できた
• ブログ執筆の文体と構成を統一できた
• チェックリストによる自動レビューで品質が向上した
• チームメンバーと共有することで、誰が書いても同じ品質を保てる
ステアリングファイルの特徴:
• 配置場所:`.kiro/steering/*.md`
• 形式:Markdown + front-matter
• 3つの適用方法:always / fileMatch / manual
• 対話しながら作成できる
• Gitで簡単に共有できる
ステアリングファイルの限界:
• 外部ツールとの連携は難しい
• 実際のコード検証には別の仕組みが必要
• 「ガイドライン提示」はできるが「自動実行」はできない
次のステップ:
次回の記事「ステアリングファイルとの違いを理解する:IaC検証Powerの実装」では、
Kiro Powerを使って外部ツール(cfn-lint、cfn-nag)と連携し、
CloudFormationのセキュリティチェックを自動化する方法をご紹介します。
ステアリングファイルとKiro Powerを組み合わせることで、
さらに強力な開発環境を構築できます。
読者の皆さんへ:
まずは、自分のプロジェクトでステアリングファイルを作ってみてください。
完璧なルールを最初から作る必要はありません。
Kiroと対話しながら、少しずつ改善していくことができます。
チーム開発でルールや規約を統一したい方、
毎回同じ指示を繰り返すのが面倒だと感じている方は、
ぜひステアリングファイルを試してみてください。
次回もお楽しみに!
参考リンク
この記事で作成したファイル
.kiro/ └── steering/ └── blog-writing-guide.md # ブログ投稿用ステアリングファイル |


