「BLEビーコン、赤外線、GPS…」IoT案件で登場したセンサー10種を解説

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ここでは、IoT案件に登場したセンサーをご紹介します。

ただし、案件の多くは人が集まる室内外(商業施設、オフィス、文教施設、病院等、イベント会場、など)を対象としていたため、そうした用途に偏ってしまっていることを予めご了承ください。

なお、IoT案件ではBLEビーコンやRFIDのように、技術的な分類ではセンサーではないものもよく登場しました。これも「IoT案件の実体」だと思いますので、ここで取り上げます。

※当社(株式会社クレスコ)がご提供するIoTプラットフォーム「KEYAKI」はIoT装置からネットワークを経由してクラウドにデータを集約するソリューションです。当社は、IoTのコンサルティングやシステムインテグレーションを承りますが、BLEビーコン等のハードウエアの生産・販売はしておりません。

BLEビーコン

BLE(Bluetooth Low Energy)プロトコルによる弱い電波を一定間隔で発信する、比較的小さな『装置』です。

BLEは、通信量を削減することで電源消費を減らし、装置を長時間利用することを目的としたプロトコルです。『ビーコン』とは、「一定間隔で点滅する灯台の明かり」という意味ですから、小さな電波灯台と考えれば、ハラオチするかもしれません。

BLEビーコン自体はセンサーではありませんが、人が持ち歩くことで「人の居場所を検知するセンサー」として振る舞うことができます。それには2つの構成パターンがあります。

構成1:建物にBLEビーコンを固定する

BLEビーコンを建物の壁などに固定して、人が持ち歩くスマホをIoTゲートウェイとして利用します。

この構成の多くは、個人所有のスマホを前提としています。個人所有のスマホを利用する場合に、センサーという視点から見た大きなメリットは、充電を必要とするIoTゲートウェイ(スマホ)を、個人が必ず充電してくれることです。

※個人所有のスマホを前提とする場合は、技術面以外のところで非常に難しい課題を抱えます。

構成2:人がBLEビーコンを持ち歩く

IoTゲートウェイとしてのマイクロサーバー等を建物の壁などに設置して、BLEビーコンを人が持ち歩きます。ネックストラップでぶら下げたり、バッヂとして服に留めたりします。

世の中では、首からぶら下げる入館証によるID管理は一般的ですから、入館証の運用と同様のルールでBLEビーコンを運用することは(比較的…)容易です。ただし、持ち歩きを考慮するために必然的に小型軽量のBLEビーコンが選定されますから、電池容量も小さくなってしまいます。BLEビーコンの電池交換の運用が大きな課題になります。

電池交換問題

前述の「構成1」においては、BLEビーコンにAC100V電源を供給する場合も多いですが、「構成2」においては、必ず電池交換が発生します。BLEビーコンを利用したIoT案件で発生する非常に頭が痛い課題が、この電池交換です。

BLEビーコンは、さまざまな場所に大量に設置して利用することを目的に、
①電波出力を下げる。発信間隔を長くする。という方法により電力消費を抑えて電池の長寿命を実現する。
②装置の構造を単純にする(部品数を少なくする)ことで、ハードウェア原価を抑える(部品点数削減は省電力にもなります)。
という思想で誕生しました。

したがって、一般的なBLEビーコンには、ディスプレイやスイッチがなく、電池残量を知る手段や、遠隔からBLEビーコンの状態を知る手段もありません。初めてBLEビーコンを目にした時は、「LEDランプはおろかスイッチすらない」ことに、大きな違和感を感じたものです。

BLEビーコンの電池切れは、本当に厄介な問題です。

電池が尽きて「ランプが光らない」とか「動かない」ということであれば分かり易いのですが、BLEビーコンの電池が切れても、IoTゲートウェイが検知できなくなるだけです。この「IoTゲートウェイがBLEビーコンを検知できない」という状態は、通常の運用において「BLEビーコンがIoTゲートウェイから遠い場所にいる」状態と同じなので、「検知できないから電池切れ」としてシンプルに対処することができません。

もし、BLEビーコンの電池が残っていることをキチンと調べようとすれば、BLEをスキャンする機能を持ったアプリを導入したスマホをスキャナーとし、対象のBLEビーコンに近づける。などの作業が必要です。さらに、スキャナーに複数のBLEの電波が飛び込んでくる場合も多いので、動作確認の為にビーコン個体の識別子(UUID)までチェックする必要があります。

こうして、BLEビーコンの電池を管理する担当者を必要とし、結果的に運用コストが大幅に上がるということになってしまいます。

地味なチューニングに耐える

BLEビーコンの電波は、遮蔽物や反射物の影響を強く受けます。

例えば、オフィスで設置しやすい高さにBLEビーコンを設置すると、間仕切りやPCのディスプレイ等でBLEの電波が減衰したりしますので、設置場所の変更や電波出力調整などのチューニングに非常に労力を使います。そのくせ、きちんと電波を押さえ込むことも難しく、BLEビーコンの電波を完全に遮蔽したければ金属の缶の中に閉じ込めるなどしなければなりません。

BLEビーコンのチューニングは、気が短い方には向かない作業です。

人ではなく、物の所在を検知したい

BLEビーコンで物の位置情報を管理したいというニーズもあります。

例えば、生鮮品を扱う市場で、買い手が競り落とした商品の移動先(所在)を確認するためにBLEビーコンを使いたいというニーズがありました。しかし、「買い手に位置情報を提供するという『ご利益』に対して、所在検知システムの導入及び運用のコストが高すぎて、見合わない」という結論となりました。

やはり、電池切れを防ぐための定期的な電池チェックや電池交換作業の為の人件費や、電池代と廃棄費用などがネックとなります。

※「大量の電池の購入、交換、廃棄」は、「企業として環境に配慮していない」ようにも見えてしまいます。

赤外線センサー

人の接近を知るためのセンサー(いわゆる人感センサー)として使います。安価なものでは、デバイスは百円程度から、モジュールは五百円程度から入手可能です。

注意点として、赤外線を吸収するガラス越しでは使えないことが上げられます。また、センサーの先端が汚れると感度が落ちます。なお、赤外線を吸収する素材の服を着ていると検知できないのでは?と思いましたが、実際にはそこまで赤外線を吸収する服に出会ったことはありませんので、気にする必要はないでしょう。

こうした安価な赤外線センサーは焦電型と呼ばれるタイプで、空間全体よりも温度が高い物体(人)が移動している事を検知します。従って、(熱を発しない)物であったり、非常に速い速度で移動していしたり、逆に静止している場合には、検知できなくなります。焦電型人感センサーは照明でよく使われているので、「自動照明のトイレに座っていたら照明が消えた」というような経験があると思います。

距離を数値で測定可能な赤外線センサーや、焦電型の弱点を持たないアクティブ型赤外線センサーもありますが、当社のIoT案件では検討したことがありません。

超音波センサー

距離を測るセンサーとして利用されます。センサーモジュールを数百円から入手可能です。

超音波を発し、対象物から跳ね返って戻るまでの時間を計測するという原理であるため、アクティブ型となります。こうした仕組みなので、熱を発しない物体の検知や、静止物の検知が可能ですが、赤外線センサーと同様にガラス越しでは検知できません。あまりに近い距離も測定できません。

照度センサー

こちらも、よく利用されるパッシブ型のアナログセンサーです。IoT的な用途としては、やはり、人の存在の確認です。

例えば、高齢の方が一人で生活していること(卒倒していないこと)を遠隔から確認する目的で利用されました。人が生活していれば居室の電灯をON/OFFするはずなので、室内の照度を検知することでそれを把握しようということです。

デバイスは数十円から、モジュールは数百円から入手可能です。高精度に数値(ルクス値)を取得可能なモジュールや、デジタル出力するモジュールなどもあり、それらも安価に入手可能ですが、高機能なセンサーは電源を必要とします。人の在室を検知することが目的であれば、照度をルクス値で取得する必要はありません。

IoTは、アナログを上手に活用することが肝要なのです。

RFID

RFIDタグには、「ICタグ」という呼び方も定着しています。また、「電子荷札」という言い方もありますが、この言葉は本来の用途をよく表していると思います。

RFIDシステムは、タグとリーダー/ライター(アンテナ)の組みあわせであり、IoT的に利用する場合はリーダー/ライターがIoTゲートウェイに繋がります。

さて、単に「RFIDタグ」といえば、電池を内蔵しないパッシブ型を指します。電池を搭載するアクティブ型のRFIDタグも存在しますが、かなり高額なので使うことはないでしょう。パッシブ型のRFIDタグは十円程度と安価であり、近い将来に一円を目指すと宣言している大手メーカーもあります。RFIDリーダー/ライターは数万円の価格です。

※海外では、パッシブ型をnon-powerd、アクティブ型をpowerdということもあります。

RFIDシステムのIoT的な使い方として、液状製品を保存・運搬する専用容器の管理があります。目的は、どの工場で、どの製品が、いつ容器に充填されたのか、そして、その製品がどの消費地で、いつ消費されたのかを把握することです。容器にRFIDタグを付けておき、製品を充填する工場や倉庫、消費地のRFIDリーダー(アンテナ)で、容器のRFIDタグを読み取ります。RFIDリーダーはIoTゲートウェイに接続されており、クラウドに情報を送ります。クラウドでは、どの容器がどこにあるのかを統合的に把握するためのアプリケーションが稼働しています。

RFIDとBLEビーコンの違い

微弱電波という意味では、RFIDとBLEビーコンは似ています。

しかし、RFIDリーダー/ライターのアンテナから受け取った電波で動作(起電)するパッシブ型RFIDタグには電池がありません。したがって、RFIDタグの電波は、(電池を内蔵している)BLEビーコンよりも微弱ですので、タグとアンテナの角度、電波の反射や吸収などによる電波特性の変動は、RFIDタグの方が遥かにシビアです。

したがって、RFIDタグとアンテナの間の距離を伸ばそうとすると、
①リーダー/ライターのアンテナが大型化する。
②アンテナ部分と信号処理部の組み合わせが必要になる。
③アンテナの出力アップにより、無線局の免許が必要となる。

など、なかなか大変なことになります。工場や倉庫は別ですが、無線局の免許を必要とするIoT機器を小売店に設置しようとする場合は、技術以外のところで様々なハードルが待ち構えています。

バーコード

バーコードは商品パッケージに印刷するなどしてモノを識別するために利用されています。JANコード等のバーコード(1次元)と、QRコード等の2次元コードがありますが目的や使い方は同じです。

一見、IoTと無関係な気がしますが、『その使い方は、実はバーコードが最も合理的では?』という結論に到るケースが、意外とあります。

IoT的用途としては、先に上げたRFIDと同様の目的で使う場合があります。従って、バーコードリーダーはIoTゲートウェイに繋がれます。

RFIDタグにはメモリーがあることが特徴ですが、タグのメモリーを使わないシステム構成であれば、タグの価格面ではRFIDよりもバーコードが圧倒的に有利になります。
そして、前述のようにクラウド上でデータを統合管理するのであれば、管理対象物にはIDだけがあれば済みますので、バーコードでの代替が可能となります。

RFIDとバーコードの違い

一般的なレジのように、スタッフが商品を手にしてタグにリーダーをかざして読み取るのであれば、タグの価格面からバーコードが有利でしょう。しかし、無人化(自動化)したい場合は、RFIDとなります。

バーコードシステムは光学システムなので、原理的にバーコードリーダー(カメラ)の視界にバーコードが入っていなければ読み取りできません。しかし、RFID(Radio Frequency IDentifier)は文字通りに無線を使うため、原理的にはRFIDアンテナから見えない場所にRFIDタグがあっても読み取りが可能だからです。

また、対象物が増えれば、直列処理しかできないバーコードと、(ある程度の)並列処理が可能なRFIDでは処理量に差がつきます。カゴを置けば商品の精算が終了するジーユーのRFID無人レジと、レジスタッフが商品一点毎にリーダーでピッピとバーコードを読み取る従来型のPOSレジを比べれば、ハラオチできると思います。

振動センサー

機械が稼働していることを検知する目的で利用します。エンジンやモーターなどで振動していれば、稼働中であると判断します。もちろん、なんらかの振動を発しなければ検知できませんが、非常に微細な振動を検知可能な高性能なセンサーがあります。

振動センサーとしては、センサー素子の変形を電気容量や電気抵抗の変化として検出するタイプが広く普及しており、身近なところではスマホに内蔵されている加速度センサーがあります。こうしたセンサーは加速度等を数値として測定できます。一方、傾斜角度や振動が一定を超えるとセンサー内部の接点が物理的に移動することでON/OFFする仕組みのセンサーがあります。こうしたタイプのセンサーは電源を必要としません。そして、IoTで対象物の振動の有無を知りたい場合はこのON/OFFで充分です。

光学カメラ

カメラ単体はセンサーではありませんが、IoT的には、駐車場の満空状態を検知するセンサーとしての応用があります。

現在は、多機能な監視カメラ装置が市販されており、人数をカウントする機能を内蔵したカメラもあります。光学カメラはガラス越しでも動作しますし、赤外線センサーや超音波センサーよりも広域を把握することが可能です。業務用の監視カメラは、機能、性能や耐久性に優れ、そして高価です。人数カウントなどのオプション機能を追加すれば、カメラの単価はさらに上がります。

そこで、「ソフトウェア屋ならでは」のコスト削減策として、センサーアプリケーションを自社開発してしまうという方法もありますので、後述します。

温度、湿度、気圧センサー

デバイスやモジュールの価格は数十円から数百円であり、アナログ出力型とデジタル出力型に大きな価格差はありません。
※無線接続機能をもつ温湿度センサー製品の価格は1万円を超えます。

IoT的には、居室や作業室の環境情報をモニターする目的で使います。居室の快適さの可視化のために、温度や湿度のセンサーが使われます。ホームオートメーションとしてエアコンの制御にも利用可能でしょう。衛生管理の観点から、カビや害虫の発生を抑えることを目的とした温湿度のモニターや、微生物や埃の侵入を防ぐ陽圧室のモニターに利用します。こうした用途においては、摂氏などの単位で、連続的な値を取得します。

GPS

GPSは、人や物の位置情報を取得するセンサーという位置付けで、IoT案件によく登場します。しかし、GPSを検討する際は、顧客を含めた関係者の誤解(期待)を解いておく必要があります。

まず始めに解かなければならない誤解は、「GPSさえあれば、誰が(何が)どこにいるのかを遠隔地から把握できる」という漠然とした誤解(期待)です。

GPSモジュールは、人工衛星からの電波を受信してモジュール自身の緯度経度等を取得するだけのものです。GPSモジュールの場所を遠隔地に知らせるためには、GPSモジュールが出力する位置情報を、携帯電話網などを経由してインターネットに送り出す必要があります。つまり、装置にはGPSモジュールの他に、携帯電話網で通信するSIMモジュール/SIMカードが必要であり、全体の制御にマイクロサーバが必要です(アプリケーションプログラム開発を頑張れば、マイコンでも可能でしょう)。

なお、SIMを使わずにWi-Fiでインターネットへ疎通することも可能だ。という意見もよくでますが、IoT案件で登場するGPSのニーズの多くは「紛失や盗難を知りたい」ですから、Wi-Fiスポットを必要とするWi-Fiや、まだまだカバー率が低いLPWAでは不十分です。

近年は、IoT向けに低額でSIMを提供するMVNO事業者があり、GPS受信モジュール自体は千円台から入手可能です(マイコンで利用可能なSIMモジュールはかなり高額です)。

また、GPSモジュールは内部で膨大な計算をするために消費電力が大きく、GPSから位置情報を受け取るマイクロサーバーやSIMモジュールも電力を消費します。

「どこにあるのかを知りたい」というニーズは非常に多いですが、装置の価格と電力消費(つまり電池)の問題から、実現は極めて困難です。

おわりに

IoTというキーワードが先走っていた時期は過ぎましたが、「IoTの実体はバズワードであった。既に消えた」ということではありません。IoTの本質である「ヒトやモノがつながる」という世の中の流れが停滞/後退することは無いからです。

ソフトウェアの世界ではAPIサービス(ソフトウェア部品)が発展しており、短期間かつ低コストに試作が可能となっています。ハードウェアも、センサーという領域においては様々なモジュールを容易に入手可能です。心得があれば、短時間かつ低コストにセンサー装置を製作できます。

IoT案件では、すでに存在している現実世界(業務や設備)に後から導入するIoT機器を『なじませる』必要があります。ERPのような「パッケージに業務を合わせる」というような考え方では、IoT導入は失敗します。既存設備にIoT機器をフィットさせるために、採寸や試着に相当するプロセスが必要です。

IoT案件のセンサー装置には、センサーとしての『機能、性能』よりも、ユーザーの使い勝手・業務現場への設置・業務担当者やサポート部署による運用などのユーザー視点からの工夫が凝らされた『装置のパッケージング』が求められます。したがって、電気・電子のノウハウよりも、業務課題の解決力や運用ノウハウが重要なのです。そしてこれは、システムインテグレーターが得意な領域です。

また、システムインテグレーター(ソフトウェア屋)ならではのコスト削減の手段として、光学カメラの項で触れたように、センサーアプリケーションを自社開発してしまうという方法があります。例えば、光学カメラを使って人数や車両数を計数するセンサーであれば、IoTゲートウェイとして利用するマイクロサーバーにUSBのウェブカメラを接続し、マイクロサーバー上で稼働するアプリケーション・プログラムで人数や車両数をカウント機能を実装します。

画像から人数を計測するようなアプリケーション・プログラムは、オープンソースのライブラリ等を活用して開発可能です。そして、ソフトウェアを自社開発すれば、どんなにカメラの台数が多くてもオプション機能のライセンス費用が発生しません。装置数が数千台から数万台となる場合に効果を発揮します。 しかし、個別にソフトウェアを開発すれば、そのソフトウェアのメンテナンスが必要となりますので、全体のバランスが大事です。

IoT案件では、『ハードウェアとソフトウェア全体を俯瞰』した上で、『既製品と作り込みを効果的に使い分ける』ことが肝要です。

この記事を書いた人

齋藤 秀幸

齋藤 秀幸

大手SIer等を経て株式会社クレスコに入社後は、クラウドソリューション、SAP向けモバイルソリューション、IoTプラットフォーム等の企画/開発を手掛けてきた。現在の目標は、講演する際に眠り込んでしまう聴衆の数をゼロにすること。趣味はワインであったが、経済合理性から焼酎甲類に転向。情報処理技術者 ITストラテジスト、システム監査技術者、プロジェクトマネージャ

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