自動車は、自動化/電動化によりECU(Electronic Control Unit:車載コンピュータ)の搭載数が増加しており、今日では乗用車一台あたり30個〜100個ものECUを搭載しています。
一方、サーバーやデスクトップの世界で定着した仮想化の技術が、高い安全性を求められるECUにおいても浸透してきており、2020年にはハードウェア仮想化支援機能をもつ車載ECUも市場に登場しました。
仮想化技術によりECUの統合が進めば、車体内部のECUが削減されることから、自動車内の部品レイアウトの自由度が向上するとともに、車重軽量化や生産コスト削減が期待されます。 世界中の自動車メーカーが、こうしたECU統合化のメリットに注目しており、仮想化によるECU統合が自動車産業のトレンドになっています。
国内や欧米の自動車メーカーの多くが参画するAUTOSAR(オートザー、AUTomotive Open System ARchitecture)という業界団体が、車載機器用ソフトウェアの標準仕様を策定しています。 AUTOSARの目的は多数のECUを搭載する自動車の開発を簡素化することです。 自動車メーカーやグローバル展開する車載機器サプライヤーにおいて、ECUの仮想化はAUTOSARの取り組みの中に包含されるものになります。
当社は、TOPPERSプロジェクト※などを通じて協調関係にある名古屋大学教授 高田広章 氏が設立したAPTJ株式会社様(以下、APTJ様)が主催する「車載制御用マイコン向けハイパーバイザーに関する共同研究開発」に2021年1月から参画いたします。
国内でのAUTOSAR普及促進のリーダーであるAPTJ様が主催するECU仮想化の共同研究開発に本年度の助走活動※から参画することで、いちはやくECU仮想化のノウハウを蓄積し、こらからの車載機器のソフトウェア開発に活用してまいります。
ECUの集約を目指した仮想化においては、ハイパーバイザー上で複数のOSやSPF※が動作し、安全系ソフトウェアと非安全系ソフトウェアが同一のECUに同居することが想定されます。 当社は、こうした今までにないシステム構成におけるハイパーバイザー制御に研究開発段階から取り組むことでノウハウを蓄積し、安心/安全な車載ソフトウェア開発をリードしてまいります。
組込ソフトウェアの業界を広く見渡しますと、車載機器以外の様々な組込機器においても、制御の高度化、自律化、ネットワーク化などの要求からマイコン仮想化のニーズが高まっています。
自動車産業で安全性が実証された通信プロトコルであるCAN(Controller Area Network)技術が医療や鉄道などで普及するなど、自動車産業で実証された技術は、高度な安全性を求められる他の業界に波及しています。
当社の強みである「サイバーセキュリティ」、「鉄板品質のソフトウェア開発プロジェクトマネジメント力」、「ソフトウェアに安心・安全を設計、実装するノウハウ」に、これから組込ソフトウェア開発の領域に浸透していく「マイコン仮想化技術」を加える事で、ECUをはじめとした、これからの組込機器のソフトウェア開発のニーズに応えていきます。
車載マイコンであるECUを皮切りに、医療や鉄道などの高い安全性を求められる各産業の組込マイコンの仮想化技術に積極的に取り組んでまいります。
クレスコのマイコン仮想化への取り組みのねらい
<用語解説>
※TOPPERSプロジェクト:組込みシステム構築の基盤となる各種のソフトウェアを開発し、良質なオープンソースソフトウェアとして公開することで、組込みシステム技術と産業の振興を図ることを目的としたプロジェクト
※APTJハイパーバイザー勉強会の助走活動:車載マイコン仮想化の勉強会を通じて共同研究開発のテーマを策定する活動
※SPF:Software PlatForm OSよりも広い範囲を指すソフトウェア基盤
株式会社クレスコ 営業統括部
〒108-6026 東京都港区港南2丁目15番1号 品川インターシティA棟 26F
TEL: 03-5769-8080
E-mail: contact@cresco.co.jp