[2023年6月19日 時点]

 

2022年度の経営環境は、ロシア・ウクライナ紛争を端緒とする世界的な物資の供給不足と資源価格の高騰が発生し、インフレーション対策として海外での政策金利が引き上げられた影響で円安が過度に進行したことにより、国内物価も急激に上昇いたしました。当社企業グループにおいても、人件費や外注費、電力代など諸原価の高騰圧力を実感し、価格転嫁と生産性向上による収益力の確保が課題となる一年となりました。
その一方で、複数年にわたって続いた新型コロナウイルス感染症の影響も当年度の後半には徐々に落ち着きを取り戻し、国内企業がコロナ後を見据えて積極的なIT投資を再開するなど、情報サービス産業にとってはプラスになる動きが認められ、当社企業グループにおいても年度を通じて堅調に受注を確保することができました。
社会的には地球温暖化や労働力不足を背景として「サステナビリティ」に注目が集まっており、「人的資本」を含めた情報開示の法制度化の機運も一段と高まっております。当社企業グループとしてもこれらの課題に背を向けることなく、従来にも増して積極的に取り組んでいく方針であります。また、AI分野では目覚ましい技術革新が進んでおり、AIが人間を超える「シンギュラリティ」(技術的特異点)を迎える時も遠い将来の話ではないといわれるまでになりました。当社企業グループも既存の情報技術に捕らわれることなく、常に新たな技術を取り込んで事業体制を構築していく必要性を強く認識しております。
このような変化の著しい経営環境にスピーディーに対応し、ステークホルダーの期待にお応えするため、当社企業グループでは、以下の課題認識のもと、諸施策を速やかに実行し、持続的な成長と企業価値の向上を実現してまいります。

1. 顧客ニーズと時代の変化への対応

当社企業グループの掲げる「CRESCO Group Ambition 2030」の実現や「中期経営計画2023」の達成のためには、安定した顧客基盤の構築と拡大が必要不可欠であると認識しておりますが、特にITシステムは「作る」時代から「使う」時代へ流れが加速しており、それに伴い顧客ニーズも多様化しているため、サービス形態を柔軟に変革することが求められております。
このような経営課題に対し、当社企業グループでは、営業・マーケティング部門の強化やM&Aによる販路の拡大に引き続き取り組むほか、デジタルソリューション事業を新たな収益の柱に据えるべく、担当部署におけるラインナップの拡充、社員へのDX教育に取り組んでまいります。また、顧客との業務・資本提携等のアライアンスや当社企業グループ内での営業案件の共有により顧客ニーズを着実に取り込んでまいります。加えて、顧客からのさらなる知名度と信頼を獲得するために、積極的な広報活動によるブランディングも進めてまいります。

2. 技術と品質の追求に基づくコアビジネスの強化

デジタルソリューション事業への投資の一方で、当社企業グループの強みである開発力を中核とした総合的なITサービス事業を安定したビジネスの根幹とするべく、継続的な強化を図る必要があると認識しております。そのためには、品質の強化はもちろんのこと、新技術の先取りも欠かせないと考えております。
このような経営課題に対し、当社企業グループでは、エンタープライズ・金融・製造の産業別セグメントごとに適切な戦略を立案し実行するほか、継続的なM&Aによる事業の補強および拡大も進めながら「稼ぐ力の最大化」に努め、顧客ニーズに的確に対応してまいります。また、品質管理プロセスの継続的な見直しに取り組むほか、新技術の獲得を目的として、資格取得や社内勉強会、グループ横断的な最新動向の共有機会の提供など幅広い教育訓練投資を実行してまいります。

3. DX時代に適合した人材の確保と育成

当社企業グループが属する情報サービス産業では、「ヒト」こそが最も重要な経営資源であると認識しております。しかし、ITの普及や少子高齢化の進行といった社会経済情勢の変化により、慢性的なIT人材不足と流動化が生じており、従業員の採用や外注先であるビジネスパートナーの確保が困難な状況にあります。
このような経営課題に対し、当社企業グループでは、従業員の給与水準の見直し、テレワーク制度・オフィス配置等の労働環境の見直し、広報活動による採用活動支援を行うとともに、新たに策定した「DX人財育成プログラム」「次世代人財育成プログラム」の実践等を通じた社員への教育投資やリテンション対策投資にも取り組んでまいります。また、ビジネスパートナーを確保するための取り組みとして、ニアショア(子会社やビジネスパートナーとの協業による国内分散開発)やベトナムを中心とするオフショア(海外現地企業との協業による国外分散開発)も引き続き推進してまいります。あわせて、M&Aを通じたIT人材の獲得も進めてまいります。

4. 機動的な経営基盤の構築

当社企業グループの持続的な企業価値の向上のためには、顧客ニーズの多様化、国内における生産年齢人口の減少、グループ経営の重要性といった事業環境の変化に柔軟に対応し、当社企業グループにおける多種多様な経営資源をより効果的かつ効率的に活用するための経営基盤が必要不可欠であると認識しております。
このような経営課題に対し、当社企業グループでは、自らDXによる経営改革を実践するべく、業務プロセスの見直しを含めた情報システム基盤の再整備、オフィスワークおよびリモートワーク環境の整備等の全体最適化、ならびに当社の管理部門を中心に据えたグループ・ガバナンス・システムのさらなる強化に取り組んでまいります。

5. サステナビリティ経営および人的資本経営の推進

当社企業グループは事業目的を達成する責務を負っておりますが、一方で、企業価値の向上と社会課題の解決の双方を実現する「サステナビリティ経営」や、人材の価値を最大限に引き出して中長期的な企業価値の向上を実現する「人的資本経営」を推進することが求められております。
このような経営課題に対し、当社企業グループは、当連結会計年度において「サステナビリティに関する基本方針」を制定し、持続可能な社会の実現に向けた行動を推進していくことを明らかにいたしました。また、「健康経営宣言」「マルチステークホルダー方針」を公表し、従業員をはじめとした多様なステークホルダーとの価値共創を進めていくことを明らかにしております。
今後も引き続き、これらの方針等に則った事業活動を展開し、適時適切な情報開示に努めてまいります。
なお、サステナビリティ経営および人的資本経営に関する詳細につきましては、有価証券報告書「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。