PM学会で発表してきた話~後編~

こんにちは。技研の「110」です。

先週、担々麺さんから紹介があったPM学会で発表してきた話~前編~の後編ということで今回は私が発表してきた2本目の論文について紹介します。

成果物レビュー結果を用いたプロジェクト問題検出手法の提案と評価

クレスコ 技術研究所 伊藤まゆみ、村田新司、青山裕介、高野政幸
     品質コンピテンシー管理室 丸山久

 

 

弊社は独立系SIerのため、幅広い分野のシステム開発を請け負っており、常に多数のプロジェクトが稼働しています。各プロジェクトが高い品質を達成するために品質コンピテンシー管理室(以下、品管部門)を設置し、プロジェクト管理を行っています。

品管部門の仕事の1つにプロジェクト状況報告のチェックがありますが、この方法でプロジェクト状況を確認する場合には「認知バイアス」により正しく状況が報告されないリスクがあります。

 

認知バイアスが何かというと、ダニエル・カーネマン(2014)は人が複雑な問題解決や何らかの意思決定を行う時に「ヒューリスティック(暗黙のうちに用いている簡便な解放や法則)」を利用するが「ヒューリスティック」を利用した解決方法には対象を評価する際に、自分の利害や希望に沿った方向に考えがゆがめられ、対象の目立ちやすい特徴に引きずられて、他の特徴についての評価がゆがめられる「認知バイアス」が発生すると主張しました。

プロジェクトで例えると、何か問題が発生している場合にプロジェクトマネージャが「お客さまの体制が弱いせいだ」というような先入観に囚われ、原因がお客様にあると思いこむようなことを認知バイアスといいます。自分たちにも問題があるかもしれないことに気づかず、品管部門へ報告してしまいます。

このような事象が発生すると、品管部門は報告からプロジェクト状況を正しく把握することができません。1つ1つのプロジェクトにインタビューを行ったり、現物をレビューすることが解決策として考えられますが、品管部門のリソースは限られているため全てのプロジェクトへこのような対応をすることは難しいです。

 

そこで報告とは別の情報源として成果物のレビュー指摘を用いてプロジェクト状況を把握する手法を考案しました。

この研究を実施するにあたって弊社で開発・運用しているプロジェクト管理ツールであるCREAMS(CREsco Advanced Management System)にレビュー指摘から情報を自動収集し、メトリクスを表示する仕組みを追加しました。

 

検証手順としては、あるプロジェクトへ今回の手法を導入し、品管部門はこれまで通りプロジェクト状況報告を確認し、検証メンバがレビュー指摘のメトリクスからプロジェクト状況を推測しました。
推測した内容とプロジェクト状況報告の内容を並べたところ、それぞれ違った問題であることがわかりました。

 

推測した内容
・レビューの質に問題あり
・設計作業に問題あり

プロジェクト状況報告
・担当顧客不在による遅延
・他社資料の精度が低いことによる作業遅延発生
・現工程内での手戻り

 

今回の研究では推測した内容の妥当性を確認するために、プロジェクトへ特別にオブザーバを参画させました。オブザーバはプロジェクト活動は行わず、プロジェクトの状況を第三者目線で観察します。
検証チームはオブザーバへのインタビューを行い、推測した内容の妥当性を確認しました。
確認したところ、推測した内容はそれぞれ実際のプロジェクトの問題であったことが確認できました。

 

これらの検証結果から、本手法が一定の効果を持つことが分かりました。
効果を証明することができたことも成果の1つですが、事業部と品管部門と技研の横断的な研究を実施することができたことも大きな成果だと感じています。

また、実際に学会で発表したことによって、より自分の研究の位置づけや意味を深く理解することができたことも大変よかったと思います。

 

発表では、2つの質問をいただきました。

1つめは、データの集め方についてです。
プロジェクトごとにデータのばらつきが出てしまうという点は、こうした取り組みについて回ることです。この研究ではチケット管理を取り入れたCREAMSでデータの登録/管理を行うことでデータのばらつきを防ぎました。このCREAMSは会社の標準ツールにすることを目指しているため、これが認められれば粒のそろったデータをより多く収集することができます。

 

2つ目は、オブザーバがいない場合の妥当性確認についてです。
今回の手法ではレビュー指摘から推測した内容をオブザーバへのインタビューによって妥当性を確認しました。オブザーバはあくまでプロジェクト状況を観察する者で、プロジェクト活動は行いません。こうした役割のメンバをプロジェクトに参画させることは通常難しいです。
そのため、実際の運用では推測した内容は品管部門からプロジェクトメンバへのインタビュー項目として利用するのが現実的だと考えています。

 

学会で発表することで、このように幅広い指摘や意見がもらえることは今後の研究活動にも非常によい影響を与えることができ、よい刺激を得られる経験になりました。

今後もこのような活動を通じてクレスコの知名度をあげることに貢献したいです。


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