昨年度は、弊社のプロジェクト管理ツールを利用し、設計工程のレビュー記録を収集しメトリクスを表示する仕組みを構築しました。
この仕組みから得られたメトリクスを基に、プロジェクトの状況を分析することができるかどうかを検証しました。
結果としては、この仕組みからは「レビューの質」、「設計作業の質」の2点に関連するプロジェクト状況を読み取ることができそうだということを導き出せました。
昨年度はプロジェクト状況の可視化を実現することができましたが、以下のような課題がありました。
プロジェクトのデータをメトリクス化したことで、業界やシステムそのものの知識がなくても分析が可能になりました。一方で、メトリクスを読み解く能力が必要になり、そうした有識者が分析をするためのコストがかかるという課題が残りました。
昨年度は1プロジェクトに適用したため、実証例がそもそも少ないことから今後も継続的に実証を行い妥当性の検証をしていく必要があります。
更に昨年度適用したプロジェクトは比較的小規模なプロジェクトであったため、有効なデータが限られており、収集したデータのすべてを分析に利用することができませんでした。
プロジェクト管理ツールに記録してあるデータを用いるため、それらのデータはプロジェクトメンバに依存します。
今回の仕組みへのメンバの理解度により、データの正確性には隔たりが発生する可能性があります。その場合、誤ったデータによる分析を行ってしまうため、分析結果の精度に影響があります。
昨年度の課題に対し、今年は以下のように取り組みを展開しています。
①メトリクスの分析は人手が必要であり、メトリクスを読み解く有識者が必要になること
→ 分析の有識者のノウハウをルール化し、判定ロジックの作成
②実証例が少なく、分析に利用できていないメトリクスがあること
→ 異なる業界、開発規模のプロジェクトで実証
③そもそもの入力データが入力者によって隔たりが生じる可能性があること
→ 入力データの項目整理とガイドの整備
今期の研究の目玉としては、①の課題に対するアプローチです。
昨年度はデータを可視化するまでにとどまりましたが、今期は一歩踏み込み、可視化したメトリクスの分析までを自動化することを目指しています。
有識者のコストを下げるというメリットもありますが、有識者のノウハウの展開・継承が難しいという課題に対し1つの解決アプローチになるのではないかと考えています。
今期の研究では、ノウハウをロジックに落としこみ、分析を行うWebAPIとして構築しています。
今期の仕組みを導入することで、プロジェクトメンバがレビューを記録しているだけで、プロジェクト状況のメトリクスとそこから分析したプロジェクト状況と対策を取得することができます。
今回は昨年度の取り組みのおさらいから、今期の研究の概要と目玉となるポイントを紹介しました。
研究の状況や、各課題へのアプローチについてはまた別の記事でご紹介したいと思います。