[2024年3月31日 時点]

 

2023年度の経営環境は、新型コロナウイルス感染症が収束したことにより内需や輸出の回復が見られたものの、資源や人手不足が顕在化し、ヒト・モノ・カネの調達コストの上昇圧力にさらされた一年となりました。
これらの状況は、クレスコグループにおけるコスト構造にマイナスの影響を及ぼす一方で、顧客企業においてはITを利用した生産性向上のための投資を加速させる結果となっており、クレスコグループを含む情報サービス産業全体にとってプラスの影響が継続しております。
クレスコグループとしては、このようなビジネスチャンスを的確に掴むことで「中期経営計画2026」に掲げる目標を達成しステークホルダーの期待にお応えするために、以下の課題認識のもと諸施策を速やかに実行し、持続的な成長と企業価値の向上を実現してまいります。

1.不採算プロジェクトの発生防止

当連結会計年度において、当社の複数の大型案件において不採算が発生したことが影響し、「中期経営計画2023」において目標としていた連結営業利益額50億円には到達したものの、計画していた営業利益率10.0%を達成することができませんでした。不採算プロジェクトが発生した場合、収束に向けて多額の人件費・外注費を投入する必要があるだけでなく、新規案件にリソースを振り向けることができず機会損失をもたらすことになるため、クレスコグループの経営成績に重要な影響を及ぼします。不採算プロジェクトは技術・品質の問題だけでなく、見積ミスや顧客との調整不足などさまざまな要因によって発生することから、発生原因を徹底的に追求し、今後同様の事態を起こさないようにするための仕組みと体制を構築してまいります。

2. ITエンジニアの確保と育成

「中期経営計画2026」で掲げる連結売上高700億円の達成のためには、幅広い技術領域と顧客のビジネスに精通したITエンジニアの確保が必要不可欠であります。この経営課題に対し、クレスコグループでは、一層のブランディング活動と採用活動の強化を行うとともに、M&A案件やビジネスパートナーの発掘、ニアショア(子会社やビジネスパートナーとの協業による国内分散開発)やオフショア(ベトナム現地企業との協業による国外分散開発)を強化することでエンジニアの母集団を増やすとともに、人財開発・育成プログラムを刷新してエンジニアを含めたすべてのグループ社員の水準の底上げを図ってまいります。また、給与水準の見直しやテレワーク・オフィス環境、安全衛生等の労働環境の整備を継続することで、社員のエンゲージメントを高めるための諸施策を実行してまいります。

3. グループ連携を軸にした顧客への提案活動

売上高の確保に向けて、大中小のさまざまな規模の案件を効率的に受注するためには、クレスコグループ各社が独自に商圏の拡大を目指すだけでなく、営業案件のグループ内での融通や、要員・技術・ソリューションの抱き合わせによる提案活動が重要であると判断しております。
このような経営課題に対して、クレスコグループでは、当社のグループ統括本部を中心に、グループ役員・営業担当・開発人員の交流機会を増やし、顧客企業からの要望に対して機動的に対応することでグループシナジーを最大化するための体制を構築してまいります。

4. デジタルソリューション事業の売上高の増加と収益性の向上

近年、顧客企業においては、少子高齢化に伴う人手不足や物価高騰に伴うコスト構造の変化、企業間競争のスピードの激化に直面しており、従来のように自社で要員や設備を抱えたり、長い時間をかけた研究開発を行うことが困難な状況になっております。この状況を打破するための解決策として、AI・クラウド・RPA等の技術を活用したデジタルソリューションに注目が集まっており、今後の需要拡大が期待されていることから、クレスコグループとしても経営資源をデジタルソリューション事業に集中し、同事業の売上高を確保するとともに収益性を引き上げることが重要であると判断しております。
このような経営課題に対して、クレスコグループでは、各種イベント・勉強会の開催や技術コミュニティ活動の促進、共同案件の獲得を通じてITエンジニアの市場価値の引き上げを図るほか、自社ブランドソリューションのさらなる開発やソリューションを有する提携先企業の発掘を進めることにより、事業全体の利益率の向上を目指してまいります。

5. 生産性の向上

「中期経営計画2026」の推進に当たり、営業・採用・調達・M&A/PMI等の業務や法規制等に対応するための活動等が増加することが予想されます。また、クレスコグループが主力とする受託型ソフトウェア開発においても、顧客からの要求レベル(仕様や条件等)が高まるものと考えられます。このような変化に的確に対応するためには、生産性の向上が必要不可欠であり、営業利益率を高めるカギにもなると判断しております。
具体策として、ITリテラシー教育を促進し、デジタルソリューションを用いた業務の効率改善と集約化を進めることで間接コストの抑制を図るとともに、グループ役員・社員が本業に集中できる環境を整備してまいります。また、アジャイル開発やRPA・生成AIの導入を促進することにより、開発効率の向上と製造コストの抑制を図ってまいります。

6. サステナビリティ経営および人的資本経営の推進

クレスコグループは経営上の目標・指標を定めており、これを達成する責務を負っておりますが、一方で、企業価値の向上と社会課題の解決の双方を実現する「サステナビリティ経営」や、人材の価値を最大限に引き出して中長期的な企業価値の向上を実現する「人的資本経営」を推進することが求められております。
このような経営課題に対し、クレスコグループは、2022年度に「サステナビリティに関する基本方針」を制定し、持続可能な社会の実現に向けた行動を推進していくことを明らかにいたしました。また、「健康経営宣言」「マルチステークホルダー方針」を公表し、社員をはじめとした多様なステークホルダーとの価値共創を進めていくことを明らかにしております。中期経営計画2026においては、クレスコグループのマテリアリティ(重要課題)を明記しており、今後も引き続き、これらの方針等に則った事業活動を展開し、適時適切な情報開示に努めてまいります。
なお、当社の健康経営の推進目的と体制、主な取り組みにつきましては、当サイトに掲載されている統合報告書にてご確認ください。