株主・投資家のみなさまには平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
日米の金融政策への警戒感や主要各国における政治的主導者の交代等の影響により為替相場や証券市場が急速に変動しており、企業業績の不安定化を招いております。また、物価水準の高騰と実質賃金の低下が続いており、国内企業における生産性の向上が喫緊の課題となっております。さらに、ランサムウェアを用いたサイバー攻撃やシステムトラブルなど、国内企業の事業活動においてITの影響が注視される事態が相次いでおります。
このような経営環境のもと、クレスコグループは今年度より『中期経営計画2026』を開始いたしました。2026年度における「連結売上高700億円」「連結営業利益率11.5%」「連結ROE15%」の達成を財務KPIとして掲げ、7つの成長戦略(①共創型モデルの確立、②品質リーダーシップ発揮、③人的資本経営推進、④技術・デジタルソリューションの拡張、⑤事業連携促進、⑥デジタル変革実現、⑦グループ一体経営)の実践を通じて、これらの財務KPIおよびクレスコグループとしてのミッションである『顧客とともに持続的に成長し、社会を前進させること』を実現してまいります。
当社においては、地方拠点におけるニアショア開発の推進、商材開発力や技術力の強化を目的として、ソリューション&サービスイノベーション本部を再編し、地域イノベーション本部へ改組いたしました。また、ビジネスイネーブルメントサービス本部を再編し、デジタルソリューション事業を推進するとともに、先端技術にも対応できる組織としてデジタルモダナイゼーション本部へ改組いたしました。さらに、品質・プロセス統括本部の配下に品質管理室およびプロジェクト管理室を設置し、品質管理の強化に取り組むとともに、ビジネスサポートセンターを設置することで社内事務の集約化と効率化を目指すことといたしました。また、グローバル市場への進出を目的として、経営戦略統括本部にグローバルビジネス&マネジメント室を設置いたしました。
当社では7つの成長戦略ごとに担当の執行役員を配置し、戦略の実現を目指してまいります。
クレスコグループ会社においては、2024年4月1日付で、当社がジェット・テクノロジーズ(株)の全発行済株式を取得して子会社とし、当連結会計年度において連結の範囲に含めております。同社はITインフラ分野における専門性と豊富な顧客基盤を有しており、高いシナジー効果が発揮できるものと考えております。
また、当連結会計年度において、当社の連結子会社である日本ソフトウェアデザイン(株)の再編を実施し、同社の名古屋支店の事業を当社が譲り受けております。同社は2024年7月1日付で当社の連結子会社である(株)メクゼスに吸収合併されたことにより消滅しております。
2024年6月には、当社が保有するクレスコワイヤレス(株)の全株式を同社の代表取締役に譲渡いたしました。この結果、当連結会計年度において同社を連結の範囲より除外しております。
2024年5月10日の取締役会の決議に基づき、当社株式の投資単位あたりの金額を引き下げ、投資家層の拡大と市場流動性の向上を目的として、2024年7月1日付で当社普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。
また、2024年7月18日の取締役会の決議に基づき、当社の取締役(社外取締役および監査等委員である取締役を除く。)および当社の執行役員である従業員ならびに当社子会社の取締役の一部に対する譲渡制限付株式報酬として、自己株式18,047株を処分いたしました(処分価額の総額は25,680,881円)。
さらに、2024年11月11日の取締役会の決議に基づき、当社の従業員に対する譲渡制限付株式報酬として、自己株式24,215株を処分しております(処分価額の総額は28,985,355円)。
2025年2月には、取締役会の決議に基づき、当社が保有する自己株式2,000,000株を消却いたしました。
2025年3月には、2025年3月期の期末配当金予想の上方修正を公表しております。なお、2025年5月にさらなる上方修正を公表し、期末配当金予想は1株当たり23円、年間配当金予想は1株当たり42円としております。
デジタルソリューション事業において、2024年6月より、クラウド総合支援Creageの新サービスとして「アプリケーションモダナイゼーションサービス」、クラウドシステム導入・更新時の生産性と品質を向上させる仕組みを構築する「Creage DevOps導入支援サービス」、AWS環境のセキュリティやガバナンスの課題を解決するサービスである「Control Towerオプション」の提供を開始いたしました。
また、ホテルの部屋割り業務最適化ツールである「RooMagic(ルーマジック)」の新バージョンをリリースし、相鉄ホテル(株)が展開する横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ様での導入が決定しております。
さらに、7月にはクレスコグループにおける適切なAI技術の活用と、将来の展開を見据えた戦略的な取り組みを行う基盤を築くことを目的とした仮想組織として「生成AIビジネス変革研究室」を設立いたしました。最新のAI技術のトレンドを継続的に追跡し開発プロセスに適用することで、生産性と品質向上を目指してまいります。
10月には、企業のクラウド環境内にGPT環境を構築し、生成AIの簡単かつ迅速な導入・活用をサポートするサービスである「生成AI環境構築サービス」の提供を開始いたしました。また、12月には、福岡市の協力のもと、屋台とデジタル技術を融合させる「屋台DX」プロジェクトの一環として、CAPICHI社の「Capi Order」システムを活用した「多言語デジタルメニュー」に関する実証実験を開始しております。2025年2月にはお客様のAI活用に向けた支援を行う「AIトレンド解説セミナー」を、3月には生成AIを活用した「社内DX推進支援サービス」の提供を開始いたしました。
セキュリティ関連分野においては、2024年11月より「自動車産業サイバーセキュリティガイドライン対応支援サービス」の提供を開始しております。
なお、ITサービス事業に関連して、当連結会計年度において損害補償損失(特別損失)を85百万円計上しております。
2024年4月に(株)クレスコ・ジェイキューブが、IBM社のOS「IBMi」市場の活性化に向け、アイエステクノポート社と包括的協業パートナーシップ「Project Techno-Cube」を締結いたしました。また、同社は2024年9月10日開催の取締役会の決議に基づき、10月1日付けで(株)高木システムの自己株式を除く全発行済株式を取得し子会社としております。
(株)クレスコ・デジタルテクノロジーズにおいては、2024年7月にクラウド型次世代ファイアウォール「Prisma®Access」導入支援サービスの開始を発表いたしました。また、同社は、11月にMicrosoft社が提供する仮想デスクトップ「Azure Virtual Desktop」の導入支援サービスを、12月にFortinet社が提供する「FortiSASE」の導入支援サービスを、2025年2月にシスコシステムズ社の「Cisco Secure Connect」を用いた導入支援サービスの提供を開始しております。
CRESCO VIETNAM CO., LTD.においては、2024年10月よりサイボウズ社の業務管理プラットフォームである「Kintone」上で利用可能な新ソリューションである「C-Rescue(クレスク)」の提供を開始いたしました。
上記の他、資金運用においては、投資有価証券売却益(特別利益)を1億73百万円、投資有価証券償還益(特別利益)を57百万円、投資有価証券評価損(特別損失)を23百万円計上しております。
2025年度の見通しにつきましては、米国の新政権のロシア・ウクライナ紛争への方向転換や、同国の相互関税政策が二転三転したことにより、主にグローバル展開を進めている大企業を中心に業績が不透明感を増している状況にあります。特に我が国においては、当社の主要顧客が属する自動車産業への悪影響が懸念されております。
また、これを受けて金融市場や為替市場も方向感を見失っており、我が国で数年来続いている人手不足やコストの増加傾向はすぐには解消しないとみております。
このように我が国の経済を牽引してきた設備投資の好調さが今後も継続するかどうか不確実性を増している状況ではありますが、生産性向上を目的としたDX投資は依然として継続するものと考えており、クレスコグループの受注も堅調に伸びていくものと判断しております。
クレスコグループでは、以上の前提条件に基づき、「中期経営計画2026」の財務目標である「連結売上高700億円」「連結営業利益率11.5%」「連結ROE15%以上」の達成に向けて、策定した成長戦略を着実に実行し、売上高の増加と収益性の向上を目指してまいります。
今後、前提条件の見直し等により開示すべき事象が発生した場合には、速やかにお知らせいたします。
2025年5月
代表取締役会長 根元 浩幸
代表取締役 社長執行役員 冨永 宏