技術研究所はクレスコの“未来の強み”と、それを生み出し続ける仕組みを作り出すことを目的に、2012年に創設されました。

計算機関連の先端技術でお客様の現場の課題をお客様と一緒に解決する「共同研究」や、大学などの研究機関との「産学連携」「医工連携」を推進し、機械学習・画像解析を用いた、医療関連領域の研究にも力を入れています。

これからも先端技術をはじめとするさまざまな技術に対して真摯に取り組むことで、お客様とクレスコの成長、そして社会と技術の発展に貢献していきます。

医用画像の分類の研究と、実用化への取り組み

2016年からは、日本やアジア圏だけでなく、世界的にも高齢化が進む中で、生活全体の豊かさ(QOL)を維持・向上を目標に、AIを用いた眼科疾患の画像解析の分野に取り組んでいます。

 

眼科では、目の表面である角膜の写真や、光を感じる細胞のある眼底を写した眼底写真、そしてそれらの断層像を撮ることのできる光干渉断層計(OCT)による画像など、さまざまな種類の画像が診断に用いられます。我々は、まず、大学医学部との共同研究として眼底の断層像からのAIによる疾患の分類を試みました。

 

この研究の成果は論文として出版されたのみならず、それを元にした「眼底疾患スクリーニング」の機能は2019年4月にOCT機器メーカーのアプリケーションの機能として発売されるに至りました。また、このような研究の発展として、それぞれの分類に合う・合わない画像中の箇所を可視化する独自の技術DiDA(Differential Image Diagnostic Analysis)を開発しました。

眼科の他の事例として、重症化すると角膜移植が必要となる円錐角膜という疾患の、前眼部OCT画像からの進行度の分類や、症例が進行性か否かの予測を行う研究を2018年から行っています。円錐角膜の病因は詳しくは分かっておらず、進行の度合いの予測も難しい疾患です。治療の方針の決定をサポートするために、我々は、前眼部OCTで得られる6つの解析画像から機械学習による円錐角膜の度合いの分類を試み、また、その症例が今後より進行していくかどうかを予測することが可能であるかを研究してきました。この研究の成果も、2024年2月に、医療機器メーカーのアプリケーションに採用されました。

現在、日本眼科学会AIプロジェクトにおける角膜の光学写真からの疾患分類の実用化へ向けた日本眼科医療機器協会の取り組みにも協力しています。我々が共同研究で開発した分類器だけでなく、他の大学・機関が研究・開発した分類器もあわせて、GUIを備えたアプリケーションCorneAIを開発し、学会などでの数々のデモ展示を行っています。そして、それをベースとして認可を得るための手続きが現在進行中です。

画像認識を活用した産業機器整備への応用

医療の分野以外でも技術研究所は計算機技術の応用に取り組んでいます。
航空機エンジンの内部には何百枚ものタービンブレードがあります。整備士は、工業用内視鏡を用いてこの一枚一枚を検査し、事故につながる傷などを見逃さないようにしており、それには長年の経験とそれに基づく技術が求められます。

 

JALとクレスコは、JALの持つエンジン整備の豊富なノウハウと、クレスコが医療分野で培った画像認識技術や機械学習技術を掛け合わせて検査の効率化し、そして不具合の発生を予測し事前に整備処置を行う予測整備の確立を目指し、研究を行っています。眼科医療で実績のある画像認識AI技術や機械学習で用いられるニューラルネットワーク技術を応用した「エンジンの内部画像を見やすく処理し、かつ過去の画像データと比較するなどのエンジン内視鏡検査支援ツール」の共同研究を2019年4月よりJAL Innovation Labを起点として開始し、2022年12月にはそうした取り組みと「航空機エンジン内部検査ツール」の開発決定を共同リリースしました。

 

このようなツールを活用することで、ベテラン整備士の持つ豊富な知見や高度な内視鏡操作技術を若手整備士へ継承することにも役立つと考えており、そうした貢献も目指し活動しています。

ジャーナル論文一覧

[1] 米原 倫子, 中川 雄次, 綾塚 祐二 他, “Use of Explainable AI on Slit-Lamp Images of Anterior Surface of Eyes to Diagnose Allergic Conjunctival Diseases”, Allergology International, Vol. 74, No. 1, pp. 88-96, 2025, doi:10.1016/j.alit.2024.07.004
[2] 綾塚 祐二, 雅樂 隆基, 安川 力, 他, “機械学習による画像診断の差分画像による解析”, 情報処理学会論文誌, Vol. 63, No. 2, pp.379-387, 2022, 情報処理学会, doi:10.20729/00216245
[3] 小山 あゆみ, 宮崎 大, 中川 雄次 他, “Determination of Probability of Causative Pathogen in Infectious Keratitis using Deep Learning Algorithm of Slit-lamp Images”, Scientific Reports, 11, 22642, 2021, doi:10.1038/s41598-021-02138-w
[4] 神谷 和孝, 綾塚 祐二, 加藤 雄大 他, “Diagnosability of Keratoconus Using Deep Learning With Placido Disk-Based Corneal Topography”, Frontiers in Medicine, p. 1732, vol. 8, 2021. doi:10.3389/fmed.2021.724902
[5] 神谷 和孝, 綾塚 祐二, 加藤 雄大 他, “Prediction of Keratoconus Progression Using Deep Learning of Anterior Segment Optical Coherence Tomography Maps”, Annals of Translational Medicine, vol. 9, No. 16, 2021. doi:10.21037/atm-21-1772
[6] 神谷 和孝, 綾塚 祐二, 加藤 雄大 他, “Keratoconus Detection Using Deep Learning of Colour-coded Maps with Anterior Segment Optical Coherence Tomography: a Diagnostic Accuracy Study”, BMJ Open, vol. 9, No. 9, 2019. doi:10.1136/bmjopen-2019-031313
[7] 桑山 創一郎, 綾塚 祐二, 柳園 大輔 他, “Automated Detection of Macular Diseases by Optical Coherence Tomography and Artificial Intelligence Machine Learning of Optical Coherence Tomography Images”, Journal of Ophthalmology, vol. 2019, Article ID 6319581, 7 pages, 2019. doi:10.1155/2019/6319581

2024年度の口頭発表(技術研究所メンバーが主著のもの)

[8] 松永 嵩. 雅樂 隆基, 中川 雄次 他, “シミュレーションデータによるエンジンの状態変化点検知”, 日本保全学会 第20回学術講演会, Aug. 2024, pp.216-220
[9] 堀越 健司, 綾塚 祐二, 安川 力, “眼底画像に対するDiDAの反応領域数と推定年齢の確信度”, 第38回 人工知能学会全国大会, 1K3-GS-10-05, Jun. 2024, pp.1-4 
[10] 米丸 直之, 田淵 仁志, 出口 帆空 他, "Multimodal AI Diagnosis of Retinal Detachment Incorporating Fundus Images and Patient Questionnaires", ARVO 2024, May. 2024, Abstract Number: 2321-A0175 (Investigative Ophthalmology & Visual Science, June 2024, Vol.65, Issue 7, p.2321.)

クレスコ 技術研究所の取り組みに関するリンク

技術研究所 Annual Report

クレスコ技術研究所のAnnual Reportをダウンロードいただけます。
Annual Reportには、技術研究所が昨年度に発行した論文リストや、いくつかの研究トピックの紹介をしています。

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